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和光国際高校「たりたの疾風」 この人の書く台本は相変わらず説明ゼリフ過多で、登場人物が状況や心情を説明してばかりいるので、人物像がちっともふくらんでこない。人物がストーリー展開のために操られている(奉仕させられている)だけのように見えてしまう。「追い込まれた時こそ…」というキーワード(テーマ?)を最初から連呼してしまうので、本来セリフのやり取り(その作り出す関係や状況変化など)から自然に浮かび上がるべきプロセスが、この台本ではすっぽり落ちてしまっているように思われた。そういう部分が不足しているため、役者は非常にがんばっているのに(殺陣なども)、がんばればがんばるほど役に酔っている(役に対する冷静な視点がない)ように演じるしかなくなっていくのだと思った。 生徒たちのやる気が、こういうかたちでうまく生かされていないことが残念でならなかった。 細田学園高校「ぼくんち」 子ども(この場合は小学1年生)を舞台上に作ろうとする時、いかにも子どもっぽく作ろうとしてしまうと失敗することが多いのではないか。これは老人の場合でも同じなのだが、老人ぽく作ろうとした瞬間に老人は舞台上からいなくなってしまう。これは、舞台で様々な役を作ろうとする時の一般論としても言えることで、いかにもそれらしく作るのは危険も大きいと知るべきである(お笑いやギャグなどで意図的にそれを作ることはあるので、一概には言えないが)。 この台本は子どもたちをどんなふうに作ったらよかったのか、観ていてあまり面白く感じられなかったのは、どうもそのあたりの作戦の立て方にミスがあったように感じた。あと、審査員の指摘から台本を見せてもらったが、ラストの書き換えはあまり適切とは言えないと思った。 新座総合技術高校「アメリカンに謎解きを。」 生徒創作だが、いま流行の刑事ドラマとはいえ、一つのストーリーを曲がりなりにも最後まで作り上げていたことには感心した。だが、そのストーリーを舞台でかたちにしていくためには、お芝居の様々な約束事(舞台上の制約)といったものをもっと勉強する必要がある。台本を書く時はどんなことに気をつけなければいけないのか、それを知らずに創作台本に挑戦するのは危険だということである。せっかくのストーリーも生かされることなく終わってしまうと思う。 キャンディスといったぶっ飛んだキャラを作り出したところなど、いかにも生徒らしくて楽しかったが、このキャラが面白すぎた反面、他の捜査一課の面々が若干個性に欠けていたような気がした。せっかくなのだから、全員にもっと思い切ったデフォルメをしても良かったのではないか。 朝霞西高校「スナフキンの手紙」 このところ、鴻上尚史・高橋いさをといった往年の傑作戯曲に連続して挑戦している朝西だが、今回の舞台が一番きっちりと仕上がっていたのではないか。審査員の指摘にもあったように、鴻上の台本を1時間にカットしようとすると、どうしても最も鴻上らしい笑いのシーンをどんどん切るしかないのだが、それを認めた上で、今回のこの舞台は精一杯楽しめる舞台に仕上がっていたと思う。 1、2年生混成の役者陣だったが、あまり凹凸なくそれぞれのキャラクターを際立たせていたし、セリフや動きのテンポも快調で、ストーリーをきちんと転がしていたのには感心した。確かにカットのため若干判りにくくなってしまったところはあったものの、元々よく判らん鴻上の芝居を、大きな乱れもなくしっかり最後まで見せ切っていたのは立派である。 朝霞高校「りんごの木の下で」 シチュエーションの作り方にかなり無理がある台本だと思うが、演技でそれなり誇張するところは誇張しながらも、ギャグ的な動きなどに安易に逃げることをせず、セリフの作り出す関係性の面白さや、行き違いや勘違いの微妙な間といったもので、つまり芝居そのものの面白さを表現することで、客席の笑いを取っていたのは立派だった。遠慮なく言えば、お母さん役以外の生徒はお世辞にも上手いとは言えないレベルだったが、最後までブレることなく愚直にそれぞれの役を演じ切ったことが、後半になって次第に客席を掴んでいった理由だったと思う。 今回の舞台で朝霞の生徒が獲得した客席の笑いは本物だった。そのことを忘れないで欲しいと思った。芝居の出来はまだまだなんだけどね、それでも客席を掴んでしまうということはあるのだ。 新座高校「お葬式」 新座は生徒が代替わりすると、前に上演した得意な台本を再演する試みをよくやっているので、この台本も何度目かの上演だったはずである。そんなに覚えているわけではないが、過去の上演で素晴らしい「お葬式」があったという記憶はあって、それからすると今回の舞台はあまり面白いとは思えなかった。細田のところで書いたことに重なるが、やはり子どもっぽく作ろうとし過ぎてしまったことが問題だったと思う。それと関係すると思うが、(言い方が難しいのだが)細部をきちんと作ろうとするあまり(それは悪いことではないのだが)、以前は魅力であった新座的な「ゆるさ」といったもの(自然な感じ)が失われていたようにも感じた。 もちろんいろいろなところを作らなければ芝居にはならないのだから、難しいものである。 新座柳瀬高校「Lonely My Sweet Rose」 「星の王子さま」の翻案である。数年前に上演したものの再演だが、今回は台本の構成がより明快になったように感じられ(台本はほとんど変えていないということだったが)、ラストがよりドラマチックになったのは確かで、柳瀬でなければ作れない舞台をしっかり見せてくれていたと思う。 照明効果の美しさは息を呑むばかりで、ファンタジーの世界を見事に構築していたと思う。それは認めた上で、照明プランはもう少し単純にできるのではないかと感じた。見せ場となるイメージ明かりは別にして、エリア明かり(地明かりや単サス)を細かく作り過ぎたために、シーンの安定感(安心できる時間)が損なわれたように感じられるところがあった。それに、これだけやってしまうと、役者の立ち位置と当たりの微妙なズレなども必要以上に気になってしまったように思う。 今回はコンクールなので、全日程終了後、審査員から顧問に対して地区の上位2校(県大会進出の可能性がある)が伝えられたが、わたしの見方と合致していたので安心した。ブロックとしては、次の土日に行われる南部地区の結果を待たなければならないが、何とかA地区から2校を実現して欲しいと願っている。皆さん、お疲れさまでした。
by krmtdir90
| 2017-09-25 17:39
| 高校演劇、その他の演劇
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