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主なテーマ、最近は映画ばかりになってしまいましたが、この何年か海外旅行にも興味があって、もともとは鉄道旅、高校演劇、本などが中心のブログだったのですが、年を取って、あと何年元気でいられるかと考えるようになって、興味の対象は日々移っているのです。
by natsu
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「俳優のノート」(山崎努)

 退職してから、基本的にヒマになったからだろう、本屋に行っても、いろいろな棚をゆっくり見て回るようになった。仕事をしている頃は、文庫本の棚は全く視野の外にあったのだが、最近はかなり丁寧にチェックするようになった。
 数週間前、棚の前の平積みの中に、この顔がこちらを睨んでいるのを見つけたのである。パラパラと中身を確認して、買おうと思ったのだが、松岡和子訳の「リア王」も同時に読まなければと考えたのである。ところが、ちくま文庫の棚にはそれがなかった。市内の本屋にはどこにもなかった。
 結局、そんなことを気にしていたら読めなくなってしまうと思い、数日前、福田恒存訳のありふれた「リア王」と一緒に購入して帰ってきた。

 このごろ嬉しいのは、面白ければ散歩を休んで読み続ければいいということである。仕事をしていてはこうはいかない。ただ、この先読める本の数は限られているのだから、つまらない本を選ぶことだけは避けなければならない。
 ということで、この本はきょう一日で読んでしまった。単行本は2000年に刊行されたもので、03年に一度文庫化されたものの新装版ということのようだった。
 新国立劇場のこけら落としシリーズとして、山崎努の「リア王」が上演されたのは1998年1~2月のことで、これはその準備・稽古・公演の経過を記録した、山崎努の(読まれることを完全に意識した)日記風のノートなのである。

 わたしはこの舞台を観ていないし、それどころか山崎努の舞台はただの一本も観たことがない人間である。それどころか、演劇部の顧問などをやっていたくせに、映画は浴びるほど観ていたのに、恥ずかしながら芝居はほんのちょっとしか観たことがないのである。高校演劇の顧問というのは、芝居を観たりやったりするのが大好きでなった人もいるけれど、ただ生徒と一緒に何かをするのが好きなだけで深みにはまってしまった例も多いのである。
 そんなわけで、芝居の方では山崎努よりも山崎哲の方が興味があって、そちらなら何本か観たこともあるのだが…。だが、舞台は知らないが、映画やテレビでは山崎努をかなり観ていたような気がする。きわめてアクの強い役者というイメージがあって、特に好きだったわけでも注目していたわけでもないが、印象にはかなり残る役者だったと思う。

 まあ、出会いというのは大概こんなものなのだろう。それでも、この本はえらく面白かったのである。わたしの中にあった山崎努という役者のイメージは、かなりズレていたことが判った。
 実際の舞台成果を知らないで言うのは気が引けるが、ここで展開されている彼の演技論はほぼ全面的に共感を覚えるものだった。と言うより、役者というものがこんなことを考え、こんなふうに本番の舞台に近付いていくのかということが判って、非常に興味深かったのである。
 もちろん、高校演劇というのはこれとは全く違ったものであるが、示唆を受ける部分は非常に多かった。いや、そんなふうに卑近なところに結びつけなくても、これほど具体的で正直な芝居作りの経過というのは、それだけで十分過ぎるくらい面白かったのである。自分は役者でも何でもないのだが、率直に、すごく勉強になったと思う。

 たぶん、還暦前後の山崎努だったから共感できるところがあったのかもしれない。傍線を引きながら読んだわけではないから、即座に一例を挙げられないのは残念だが、なるほどそうだよなと感じる部分がたくさんあった。現役顧問の時代だったら、何度も読み返したに違いない。
 ただ、「リア王」という本については、シェイクスピアとは言え、正直言ってあまり面白い本とは思えないんですよね…。
by krmtdir90 | 2013-12-04 21:36 | | Comments(6)
Commented by yassall at 2013-12-05 10:44
山崎努はデビュー当時に黒澤明の「天国と地獄」に出演していることをかなり後になって知りました。モノクロということもあって後年とは異なった鋭さとすごみがあったように思います。性格俳優という感じですよね。
Commented by natsu at 2013-12-05 18:15 x
実は、黒澤映画では、どことなく印象が似ている仲代達矢の顔とごっちゃになっている感じなのです。「影武者」で、二人が文字通り共演しているんですね。でも、記憶というのはどんどん薄れてしまうのだなぁと思いました。
この本、全体が日付を追って書かれているので、途中で藤田敏八と伊丹十三の死が出てきて、そうか、この年(1997)のこの日だったのかと。
伊丹の映画では「マルサの女」や「お葬式」などに出ていたのは覚えていたのですが、藤田敏八の映画にも出ていた(「スローなブギにしてくれ」など)のは印象にありませんでした。
伊丹十三が自殺だったことも忘れていました。
Commented by at 2013-12-07 15:03 x
シェイクスピア作品は面白い作品の方が少ないと思います(^^;
特に『リア王』はシェイクスピアの中でも代表的な『無理矢理悲劇』なのでどんよりした感じの強い作品ですね。
せっかく、原典はハッピーエンドなんだから無理矢理、悲劇にしなくてもと思いますが、当時の人々は悲劇好きだったんですかね。
Commented by natsu at 2013-12-07 21:22 x
今回、巻末に出ていた福田恆存の解題で、「原リア」とも言うべき作品があったことを初めて知りました。せっかくハッピーエンドだったのを、シェイクスピアが悲劇にしてしまったということも。
世の中には、悲劇(アンハッピーエンド)でなければ終われない作品というのはあると思うけれど、「リア王」は最初から悲劇にすることだけが目的で、きみが言うように、無理矢理感が強すぎる気がしてどうも好きになれないのですね。
でも、山崎努が役者として、この本にとことん食い下がっていくところは、十分読みごたえがあったのは事実で、そこは認めなければならないと思っています。
でもやっぱり、面白くないものは面白くないよね。当時の人たち、何が面白かったんだろうか?
Commented by at 2013-12-07 23:19 x
不思議に思ったので何年かぶりにシェイクスピアの専門書を引っ繰り返してみました。すると、1つの見方ですが、シェイクスピアは客筋の分化を進めたという指摘があるようです。
つまり、初期の作品は大衆にウケる商業演劇を作っていましたが、後期の作品は王侯貴族向けに芸術性の高い作品を作るようになっていったと。
・・・ということで、中期から後期に位置する四大悲劇などは当時の人たちが楽しんでいたというよりも、当時の貴族たちが『今日の演目は奥深いですわねぇ~』などと楽しむのもだったみたいです。
言われてみれば、確かに初期の『ロミオとジュリエット』のバルコニーのシーンはいかにも大衆受けしそうですが、後期の『マクベス』の「綺麗は汚い、汚いは綺麗」など哲学的で取っつきにくいかなと思います。実際、『リア王』の原典である『レア王年代記』は娯楽作品としてたいそう人気だったそうです。
いつの時代も行き着く先はという感じですね。
Commented by natsu at 2013-12-08 15:19 x
「奥深い」って、うまい言葉だねぇ。
なんか、そんな言葉で訳判らんものを評価してしまう輩って、どの時代にもいそうな気がするね。
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