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芥川賞こんなものか、というのが率直な印象。
ブログを始めて以来、取り上げる本の中に直木賞作家は混じるが芥川賞作家はいなかったので(実際、読んでいなかったのだから仕方がない)、今回のはあまり難しくなさそうだから、ちょっと読んでみるかという気を起こした。 比較的すらすらと読むことはできたが、全体としてあまり面白いとは思わなかった。面白いところを見つけることができなかった。 選評を読むと、高木のぶ子氏や宮本輝氏、山田詠美氏あたりが評価したのだろうか。町や建物といったものに対するこだわりと、描写の仕方に特徴があるのは判ったが、それはそれほど特筆すべき美点のようには思えなかった。 と言うか、この人はそれほど文章がうまい人だとは感じられなかった。場面の作り方や人物の表現の仕方が、描写としてはあまり的確性があるとは思えなかったのである。 描写が内包するイメージに豊かな密度が感じられず、間延びしているようなのも特徴的な美点としてしまえば文句のつけようもないが、わたしには平板な説明的表現が案外多いような気がして、描写力というか文章力というか、とにかくそういうものが抜きん出ているとは思えなかったのである(村上龍氏が指摘している“「”の問題も、その一端だと思う)。 主人公(太郎)の造形に面白みがなく、様々な登場人物もそれほど魅力的には描かれていないと思った。いろいろなエピソードが、思わず惹きつけられてしまうような自然なものになっていない気がした。 一例を挙げれば、最初のあたりにある「雲を眺めていると、太郎は、雲の上にいる自分を想像した。いつもした。」から始まる一連の描写。後の方でも同じ内容が繰り返されるのだが、これが主人公の造形に効果的に寄与しているとは思えないのである。むしろ、主人公の内面のリアリティを、逆に胡散臭いものにしているような気さえする。 また、ラストのエピソード、「水色の家」から女性の遺体が発見され、それがテレビドラマか何かの撮影だったという展開など、一体何を表現したかったのか、わたしのような凡庸な読者には全く意味不明と言うしかなかった。 選評全体を覆う冷めた雰囲気などからすると、該当作なしが一番妥当な線だったような気がするのだが、該当作がないと儲からない出版社サイドの事情などが、選考に影響を与えているということがあったりするのだろうか。 選者の顔ぶれも、しばらく遠ざかっていたうちにずいぶん知らない人が混じり、選評も核心をズバッと突くような文章は見当たらなくなって(昔からそうだったか?)、芥川賞は今後もマークする必要はないかなと思わされたのである。
by krmtdir90
| 2014-08-11 13:06
| 本
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Comments(2)
Commented
by
パーシー
at 2014-09-29 19:51
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いきなり失礼します。私も面白いところを見つけられませんでしたし、人物に魅力を感じませんでした。共感を覚えたので書き込みました。雲に関する描写に違和感を感じていましたが、あなたの文章のおかげでどんな違和感だったのかはっきりした気がします。ありがとうございます。
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by
natsu
at 2014-09-29 22:28
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コメントありがとうございます。
同じように否定的に感じている人がいることが判り、ちょっとホッとしました。 あまり(ほとんど?)読んでいる訳ではないのですが、直木賞の作品は時が経っても結構残っているのに、芥川賞の作品というのは、あっという間に忘れられてしまう作品も多いような気がしています。 また、よろしくおねがいいたします。
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