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主なテーマ、最近は映画ばかりになってしまいましたが、この何年か海外旅行にも興味があって、もともとは鉄道旅、高校演劇、本などが中心のブログだったのですが、年を取って、あと何年元気でいられるかと考えるようになって、興味の対象は日々移っているのです。
by natsu
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「福島第一原発事故7つの謎」(NHKスペシャル「メルトダウン」取材班)

「福島第一原発事故7つの謎」(NHKスペシャル「メルトダウン」取材班)_e0320083_1446743.jpg

 いろいろな問題が未解決のまま棚上げにされ、それらについての記憶や問題意識が薄れていく中で、次なる目先の問題に人々の興味や関心が移っていってしまう。忘れてしまっていいはずのない問題が、目まぐるしく移り変わる時間の経過によって次第に色褪せていく。
 そういうことが繰り返されるうちに、おかしな方向が巧妙な目くらましとともに次々に打ち出され、この国はどんどん危険な領域に足を踏み入れているのではないか。このブログは政治的な問題とは一線を画しておきたいと思っているのだが、もちろん関心がないわけではないから、どうしてもそういうことに触れずにいられない時もあるということである。

 あれだけの過酷事故を引き起こし、何十万という人々の住む土地を台無しにしてしまった事実があるのに、いまだに事故の実態はほとんど明らかになっていないし、廃炉への道筋も見えていない。そうした中で、原発再稼働ということだけががもはや既定路線のようになって進行している。再稼働して電気料金を下げないと、せっかく回復してきた景気に悪影響が出てしまうけれど、それでいいんですかなどという誤魔化しが大手を振ってまかり通っている。
 景気回復は円安と株価上昇で利益を得られる人々のものでしかないし、こんな言い方は低劣な論のすり替えでしかないのだが、原発から遠く離れ直接の被害を受けなかった人々は、時の経過とともに何となく原発のことはもういいというような気分に流されてしまいそうになっている。

 NHKも、会長や経営委員に訳の判らぬ輩が送り込まれて以降、ニュースや解説番組での後退が顕著になっていると言わざるを得ない。だが、良心的な番組がNHKスペシャルといった番組枠で、時折ぽつりぽつりと放送されていたことは知っていた。ただ、わたしは番組表をチェックして熱心にテレビ番組を見るという習慣はないから、この本の元になった「メルトダウン」シリーズというのも、実は一本も見たことはないのである。
 だが、番組の方は見ていなくても、この本を読むことで、事故の真相に迫ろうとする粘り強い検証作業が行われたことは十分判ったし、その今日的意義についても理解できたと思う。あの事故は決して忘れてはいけないことだし、ますます目を光らせて、しつこく事故の全貌の解明に付き合っていかなければならないのだと感じた。

 「7つの謎」という書名に呼応して、本書には7つの章が立てられている。その各章に付けられたタイトルを書き抜いておくことにする。
 第1章・1号機の冷却機能喪失は、なぜ見逃されたのか? 第2章・ベント実施はなぜかくも遅れたのか? 第3章・吉田所長が遺した「謎の言葉」ベントは本当に成功したのか? 第4章・爆発しなかった2号機で放射能大量放出が起きたのはなぜか? 第5章・消防車が送り込んだ400トンの水はどこに消えたのか? 第6章・緊急時の減圧装置が働かなかったのはなぜか? 第7章・「最後の砦」格納容器が壊れたのはなぜか?

 各章に示された具体的な検証の過程やその答えについては、ここで繰り返すことはしない。だが、本書でも述べられている通り、この事故に関する「謎」はこの7つだけで終わるものではないし、いまだにメルトダウンした炉内の状況さえ把握できていないことを考えれば、こうしたことを忘れたりやり過ごしたりして(そういう方向に誘導して)、原発を再び動かすなどという選択肢が、いかに無謀なものであるかは火を見るより明らかと言うべきではないか。
 再稼働に向けて、原子力規制委員会が新たに作られた規制基準による適合審査を実施しているが、多くの「謎」や未解明の部分を残したまま見切り発車で作られた規制基準に、どれほどの責任が負えるものなのか全く疑わしいと言うしかないではないか。委員会自身が、審査は安全を審査しているわけではなく、規制基準に合格か否かを判断しているだけだとうそぶいているのである。

 本書が指摘している様々な事実は、原発の安全(そんなものがあればの話だが)にとってどれ一つ見過ごすことが許されるものはなく、とりわけ第6章・第7章で明らかにされていることは、適合審査などというものがいかにまやかしであるかを、白日の下にさらして見せていると思う。
 第6章に減圧装置とあるのはSR弁と呼ばれる装置のことらしいが、緊急時に原子炉内の圧力を下げる働きをするこの弁が操作不能になり、原子炉が制御できない高圧にさらされ、爆発による東日本壊滅の一歩手前まで行っていたという事実だけで言葉を失う気がするが、さらに、寸前で弁を開放できたのが現場技術者の勘とも言える手段であったということにも、言いようのない恐怖のようなものを感じるのである。
 しかも本書は、第6章を「最後の一線で踏みとどまったかのようにも思えるが、現時点では、SR弁の開放が事態の進展にどう影響したかは謎のままだ」と述べて終わっているのである。

 第7章の格納容器の破損のところでは、破損箇所が見つかっている1号機と3号機においても、他に破損箇所がないかどうかはまだ判らないとした上で、「現時点では、格納容器のどこが本当に壊れているのか、いまだ正確にはわかっておらず謎に包まれたままである。もしかすると、私たちがまだ想像していない場所に損傷箇所があるかもしれない。そうなれば、ようやく見え始めた格納容器の破損の原因も全く違うものになる可能性すらある。(一部略)放射能を封じ込める『最後の砦』のはずだった格納容器が、なぜ壊れたのかという最大の謎の解明は、まだ緒についたばかりなのである」と述べて章を閉じている。
 こんな現状であるにもかかわらず、規制委員会によって進められている適合審査とはいったい何なのか。見過ごすことの出来ない誤魔化しが「粛々と」進められていることに、言いようのない恐怖と怒りを感じるのである。
by krmtdir90 | 2015-06-29 14:46 | | Comments(0)
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