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ブログには旅とか読書とか、いろんなことを記録しておく要素があると思うのだが、その作業にけっこう時間がかかってしまうのだ。これはたぶん個人差がかなり大きいもので、書いたりまとめたりという作業のスピードが速い人、そういうことをてきぱきと要領良くこなせる人もいるのかもしれないが、わたしはそうではないことが日を経るにしたがって明らかになってきたのだ(現役の頃は、仕事はけっこう早い方だと思っていたのだが)。 たとえば、この前載せた「生きて帰ってきた男」や「居酒屋の戦後史」「戦後入門」などの感想文は、いずれも完全な一日がかりで書いたものである。途中立ち止まっていろいろ考えたり、あれこれ調べたりしているうちに、時間はあっという間に経過してしまった。そういう時間はわたしにとってどちらかと言えば楽しい時間なので、ブログを始めた頃と比べるとどんどん長くなっている感じなのである。 そういう時間は決して無駄とは思わないが、もっとスピード感を持ってササッと終わらせるようにしないと、もともと書くのは遅い方なので、そろそろ考えなくてはまずいかもしれないと思ったのである。そう思わせられるきっかけを作ったのがこの本ということになる。 著者は1938年生まれというから、もう70も半ばを超えている人である。この人は冒頭で、70代は「まぎれもない老年」であって、「そのあたりから体力・気力・記憶力がすさまじい速度でおとろえはじめ、本物の、それこそハンパじゃない老年が向こうからバンバン押しよせてくる」と書いている。60代というのは「ホンの短い過渡期」にすぎないとも。 この本は、その「まぎれもない老年」の読書がどんなものなのか、どんなふうに行われているのかといったことについて、著者自身の日常や有名作家の晩年などを行き来して、まあ何と言うか、かなり開き直った(楽しい)エッセイ集なのだが、その70代までもうあと少しになってしまったわたしとしては、冒頭の一節(その断定)が思った以上にショックで、以後あまり心穏やかに読むことができなくなってしまったのである。 わたしの身体に起こっている変調は、もしかするとまだほんの序の口にすぎないのかもしれない、これからどんどんいろいろな不具合が押し寄せてくるのかもしれないという、認めたくない部分をズバリ指摘されてしまった感じがあって、その認識をこれからはいろんなことの出発点にするしかないのだと、不本意ながら納得させられることになったのである。 だとするとどういうことになるか。一日がかりで読書の記録をするのは、たぶんもうまずいことなのではないか。それよりも、その時間で次の本を読み始めた方がいいのではないか。読みたい本はまだ次から次へと出てくるのだから。 記録することは無駄ではないが、要領良く済ませなければ本末転倒になってしまう。何しろ、老年というのはいつまで読めるか判らない状態の始まりだからである。 これは焦りではない。焦ったところで、何がどうなるかは誰にも判らないのである。ただ、ついこのあいだまで身体の変調など考えもしなかったのに、それは確かにわたしのところにやって来てしまった。それなら、記録するより読んだ方がいいではないか。 もちろん、読んだあとで感想を記録しておきたいという本はあるのだから、これは二者択一の問題ではない。あくまで感想はほどほどに、あるいはできるだけ簡単に書いておけばいいのではないかと思ったのである。根がダラダラした人間だから、できるかどうか判らないけどね。
by krmtdir90
| 2016-01-15 17:32
| 本
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Comments(2)
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by
yassall at 2016-01-16 00:09
natsuさんの読書録はいつも感心しながら(ときに圧倒されながら)読ませてもらっています。本選びの嗅覚が抜きんでているし、とくに小説読みについては「どうしてこんなふうに読めるのだろう、書けるのだろう」と、ただただ感服させられるばかりです。そう弱気にならず、これからもハッとさせられる文章を書いて下さい。若い時分は読みっぱなしでも平気でしたが、近年は記憶力の減退はなはだしく、記憶と思考の定着のためにも書くことは力になっていると思っています。in putとout putとのバランスは大切だとも考えています。とはいえ、私もブログのアップに1日がかりというのはしょっちゅうで、暮れの読書録には2日がかりでした。簡潔にまとめる技の修得が必要なのは確かですね。
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by
natsu
at 2016-01-16 17:30
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Yassallさん、ありがとうございます。
弱気になっているつもりはないのですが、こんなふうに言っていただけると、時には一日がかりも必要かなと考えてしまいます。ただ、簡潔にまとめる技の習得というのが当面の課題であるのは確かで、そのあたりはやはり心がけて行こうと思っています。これからもよろしくお願いします。
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