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主なテーマ、最近は映画ばかりになってしまいましたが、この何年か海外旅行にも興味があって、もともとは鉄道旅、高校演劇、本などが中心のブログだったのですが、年を取って、あと何年元気でいられるかと考えるようになって、興味の対象は日々移っているのです。
by natsu
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映画「アラビアのロレンス」再見

 黒澤明の「七人の侍」が、4Kデジタル技術(どんなものなのか、わたしは全く判らないのだが)で公開時の状態に復元されたというニュースをやっていた。この「アラビアのロレンス」も同じやり方で復元されたものらしい。フィルムの劣化というのが避けられないものであるなら、こうしたかたちで往年の名画を保存していくことは、緊急にやらなければならないことだと思う。
 だが一方で、そうした処置が過去の映画フィルムのどのあたりまで行われているのかというのも気になってしまう。誰もが名画と認めるものが初めてニュースになるようでは、幾多のユニークな作品群が日々劣化するままになっているのではないかと心配になってくるのである。「雨のニューオリンズ」とか「八月の濡れた砂」とか、あれらのフィルムはいまどこでどうなってしまっているのかと、不安な気分にならないではいられないのである。

 「アラビアのロレンス」は、この技術で復元されたものが今週の月曜日(22日)にBS2で放映された。デッキに録画しておいたものを、きょうの午後、CDにダビングしながら観たのである。きょうはダビングだけで同時に観るつもりはなかったのだが、最初のあたりを何となく観ているうちに、ついつい最後までテレビの前を離れられなくなってしまった。
 こんな凄い映画だったのかと、改めて再認識させられた。わたしがこれを観たのはたぶん学生時代だったと思うのだが、映像の凄さはたくさん記憶に残っていたが、映画そのものの凄さは恐らく判ってはいなかったのだろうと思った。初見のあとで再見した記憶はないから、何十年ぶりの再会だったのだろう。テレビの小さな画面を通してだったが、いろいろなことが蘇り、そして初見の時には気付かなかった様々なことが確認できたと思った。
 3時間半というのは簡単な時間ではないが、その気になればこれからいつでも再会できるというのは、やはり技術の進歩に感謝すべきなのかもしれない。

 それにしても、昔は(年寄りそのものの言い方になるが)こんな凄い映画が作られていたのだ。こんな凄いスケールの映画は、もう二度と作られることはないだろうと思った。CGなどという偽物を作り出す技術ではなく、すべてが現場で実際に作られた映像なのである。デジタルではない、アナログの70ミリフィルムがその本物のすべてを写し取っていたのは凄いことではないか。この砂漠の映像の素晴らしさは、とうてい言葉で語ることのできないものだと思った。
 ピーター・オトゥール、オマー・シャリフ、アンソニー・クイン、アレック・ギネス、……みんなまだ若くて精悍な姿を見せている。今回再見して、この映画には女優が一人も出ていなかったことに初めて気付いた(そう言えば、「戦場にかける橋」もそうだったか)。モーリス・ジャールの重厚な音楽も懐かしかった。当時、こういう大作にはみんな、音楽だけで映像のない「Overture(序曲)」があり「Intermission(途中休憩)」がついていたことも思い出した。

 初見の時にはたぶん理解できていなかったロレンスという人間像が、今回はよく判ったような気がした。ロレンスのアラブへの愛と挫折、そんなふうにまとめてしまっては身も蓋もないが、デビッド・リーンが描き出した人間たちの姿がどれも鮮明に見えた気がした。
 20代と60代で鑑賞眼に差があるのは当然かもしれないが、こうして昔観た時曖昧なままに忘れてしまっていた映画に、遅ればせながら初めて出会うというような経験もあるのだと思った。ここに描かれたロレンスの屈折というものは、恥ずかしながら今回初めてきちんと理解することができたように思う。そして、すべてのものを呑み込んでしまう砂漠の雄大なスケールも、その人間ドラマがあってこその映像なのだと再認識させられた。
 デビッド・リーンは個人的には「ドクトル・ジバゴ」が一番好きなのだが、この「アラビアのロレンス」は、たぶん彼の最高傑作であるのを認めないわけにはいかないと思った。
by krmtdir90 | 2016-02-23 22:22 | 本と映画 | Comments(0)
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