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SFはもともと好きな方で、この映画の監督がリドリー・スコットだったので、久しぶりに観てみようという気になったのである。リドリー・スコットは、かつて映画ファンだった者には、何とも懐かしい名前である。「エイリアン」(1979年)や「ブレードランナー」(1982年)に衝撃を受けた記憶はいまも残っている。調べてみると、生まれは1937年で、この映画(2015年)を撮った時は78歳だったようだ。 彼は、わたしが映画を離れていた間もずっとコンスタントに作品を発表し続けていたらしく、いまやハリウッドでは押しも押されもしない「巨匠」となっているようだった。この映画は、売れる大作が撮れる「巨匠」の、いかにもハリウッドという感じのSF娯楽大作になっていた。 もちろん、それは観る前からある程度予想できたことで、宇宙開発の近未来を描くSFということで、わたしは十分楽しむことができたと思う。ただ、かつて「エイリアン」や「ブレードランナー」の特異な空想世界に酔ったことのある者には、ああした斬新で幻想的な空想美術が見られなかったのは少し残念な気もしたのである。しかし、今回の映画がNASAの全面協力で作られた火星探査ものである以上、その空想世界(そのイメージ)が、科学的裏付けによってかなり制約を受けてしまうのは仕方がないことだったのだろうと思った。 赤い砂漠と赤い岩肌がどこまでも続いている火星表面のイメージは、なかなかのものだと思った。だが、たまたま昨日「アラビアのロレンス」を見返してしまったのは、この映画にとっては不幸なことだったかもしれない。あの砂漠のイメージと比べると、本物と偽物と言ったら言い過ぎかもしれないが、こちらはどうしても見劣りしてしまう気がした。 こちらはデジタルによって撮影され、技術的にはずっと進歩しているはずなのだが、火星の荒涼とした大地の広がりを写しても、どうも画面全体がのっぺりとして平板な感じになっていたように思われた(3Dだったら立体的に見えたかもしれないが、言いたいのはそういうことではない)。時間によって変化する風景の微妙な表情とか、砂や岩の表面から受ける質感といったものが、どうしても作られたものという感じがしてしまって仕方がなかったのである。 比較するのが間違っているのかもしれないが、これはデジタル撮影のせいであって、デジタルというのはそういうものなのだと了解するしかないのかもしれないと思った。 「エイリアン」や「ブレードランナー」に見られた空想イメージの自由な飛翔には、当時どんな映画でも見たことのない新鮮な驚きがあった。作りものという感じはあったが、空想そのものの美的な広がりが全体のリアリティを支えていたように思う。 この映画は、どうしても科学的リアルに基づく空想にするしかないので、いろいろな意味で非常によく作り込んではいたが、イメージの奔放さに欠けてしまうのは仕方がないことだったのかもしれない(まあ、最初から判っていた「ないものねだり」はこのくらいにしておく)。 その上で、このストーリーはハリウッド的娯楽大作として、非常に面白く組み立てられていると思った。火星の基地にたった一人で取り残されてしまった宇宙飛行士(マット・デイモン)という設定が面白いし、そのサバイバルと地球からの救出劇というのは、終始絶望的状況が山積で、なかなかスリリングだしドラマチックなものになるのは明らかである。 これが月面だったら、ロケットはせいぜい3日で到着してしまう。だが火星となると、一気に100日を超える航行が必要になってくるのである(地球と火星の位置関係で、所要日数は大きく異なってくる)。通信手段が回復しても、電波の到達にさえ3~22分もかかってしまうのである。したがって、サバイバルも救出作戦も、数百日という気の遠くなるような時間を見据えた戦いとならざるをえない。そのあたりを、この映画は常にアメリカ的ユーモアを忘れず、一つ一つ乗り越えていくのである。映画としては、最後には(危機一髪で)助かることが判っているのだから、こういう話は大好きである。 細かなことを言えば、そんなにうまくいくはずがないと思えるところもけっこうある気がするが、そういうツッコミ探しは野暮というものだろう。2時間22分、十分堪能させてもらいました。
by krmtdir90
| 2016-02-24 18:17
| 本と映画
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