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昨日は終日曇り空の肌寒い一日だったが、この日は一日中よく晴れて暑いくらいだった。朝のいわき駅(偶然人影が全く途絶えた)。
この日はいよいよ、不通区間を代行バスで乗り継いで行くことになる。事前にインターネットで代行バスの運行時間を調べた。時刻表などには「代行輸送は列車との接続は行っていません」と書いてあるが、これはバスに遅れが出た時の言い訳で、両者の時間設定を見れば、それなりの接続が考慮されているのは判るのである。 不通区間は2カ所だが、最初に通過しなければならない竜田・原ノ町間が問題だった。この区間は福島第一原発の事故による不通区間で、放射能に汚染された地域を横切らなければならないから、代行バスが運行されているとはいえ、実際どういうルートを通るのか不安もあった。ルートは判らなかったが、時間の方は判った。両駅間の直通運転で一日2往復だけだった。 下り・竜田→原ノ町は、9:35→10:50と20:10→21:20の2本である。この「9:35→10:50」という時間が、今回の計画の出発点になった。このバスに乗るためにいわきでの一泊が必要になり、8:50発の上記の列車に乗ることが必要だったのである。 さて、広野駅で昨夜の不気味なビルの正体を確認。 左に目をやると、盛り土された部分(防波堤?)の向こうに僅かに水平線が見えていた。 調べてみると、指定廃棄物とは1キログラムあたり8000~10万ベクレルの放射性物質汚染廃棄物を言い(このベクレルというのがまたよく判らないのだが)、環境省のホームページでは「原子力施設で発生する廃棄物の放射能濃度と比べて、はるかに小さいものです」と、大したものではないことを懸命に強調している。 9:23、竜田駅着。 線路はさらに先の方に続いているが、行くことはできないのである。 わたしのような一時的に通過するだけの人間には影響はないかもしれないが、ここでずっと生活していくことを想定すれば(子どもも含めて)、不安を感じる人がいるのは全く自然なことだと思う。 楢葉町について調べておくと、原発事故直後は町の大半が半径20キロ圏内にあったため、警戒区域に指定され全町避難を余儀なくされた。その後、2012年8月、避難指示解除準備区域に再編されたが避難は継続。避難指示が解除されたのは2015年9月5日のことだった。 竜田駅の営業再開は2014年6月1日だったというから、この時は避難指示はまだ解除されておらず、避難区域内で初の鉄道路線再開ということだったようだ。 竜田駅の駅舎外観と代行バス。 さて、原ノ町行きの代行バスは定刻の9:35に発車した。乗客は5~6人だったと思う。運転手のほかに車掌の女性(本人は添乗と言っていた)が乗務していた。発車して間もなく、バスは国道6号線を通行することが告げられ、途中で帰還困難区域を通るので窓は開けないようにという注意があった。 人が住めない放射能汚染地帯を貫くかたちで、国道6号線は(幹線道路だからということなのだろう)通行可能としているのである。帰ってから調べてみると、富岡町-双葉町間の約14キロは、事故後ずっと(指定車輌以外は)通行禁止になっていたが、2014年9月15日に(各方面からの強い要望により)一般車も通行可能となったもののようだ。周囲は依然として立ち入り禁止区域のわけだから、窓を開けるとどのくらいの放射線量が計測されるのか。まあ、通過するだけだからたぶん大丈夫なのだろうと考えるしかない。 国道に出るまで少しの間、家並みのある一般道を走ったが、周囲の人家は戸締まりされたまま帰還していない家も多く見られた。 国道に出て少し行ったところで、信号待ちの停車があった。見ると、右手の道路が福島第二原発の入口に通じているという表示があった。 忌まわしい指定廃棄物のフレコンの山。 乗務の(添乗)女性はガイドというわけではないから、帰還困難区域に入ったとか出たとか、当たり前だけれど説明などは一切なかった。だが、道路の両側を見ていると、何も言われなくてもここはもう人が帰れない地域なのだということが判った。 人影のない町並みを幾つか抜け、さらに点在する人家であったり、国道沿いに特有のよく見かける商業施設など、とにかくどれも地震の激しい揺れに耐え、津波にやられることもなく持ちこたえた建物なのに、ほとんどがそのまま放置され、荒れ果てた姿をさらしているのである。思いがけず色鮮やかなままの看板などが見えたりするが、国道に接する脇道にはバリケードが設置され、ここを走ることはできても、周囲に足を踏み入れることはできないのである。 あまり写真は撮らなかった。人家を撮るのは申し訳がないような気がして、ありふれた商業施設などを写しただけである。窓を開けたら、どのくらいの放射線量を計測したのか気になった。。 バスは予定時刻より10分ほど早く、10:40に原ノ町駅に到着した。 原ノ町駅は福島県南相馬市の中心駅になるようで、構内も広く、駅舎も立派なものだった。 ここで1時間20分ほどの待ち時間がある。駅舎の左の方に、構内を跨いでいる立派な跨線橋があったので、まずそこに上ってみることにした。両サイドに自転車も乗れる大きなエレベーターが設置されていた。 場合によっては昼食でもいいかなと思っていたら、こんなお店にぶつかったので入ってみた。 再び駅に戻り、停車している発車待ちの電車に乗る。12:02発の相馬行き。仙台カラーの701系交流電車、2輌編成。車内はロングシートである。 なお、まだ触れていなかったが、常磐線はずっと複線だったが、いわきを過ぎて2つ目の四ツ倉駅(久ノ浜駅の1ついわき寄り)から単線となり、途中一部複線になるところもあるが、この先はずっと単線(電化はされている)なのである。 12:19、相馬駅着。 下車して、ホームから不通になっている方向を見る。 当初の計画ではこのバスは見送って、1時間ほど駅の周りを歩いてみるつもりだった。ただ何となく、バスの前にいた係の男性に気になっていたことを聞いてみたのである。常磐線が運行再開している浜吉田駅ではなく、その次の亘理駅との間を代行バスがつないでいるのはなぜなのか。すると、この区間は一応各駅停車の運行になっているが、浜吉田駅はバスが走行する国道から4キロも離れてしまうので、バス停は国道沿いに作ってあるが、駅前に入れる亘理駅とを結んでいるのだという。 浜吉田でバスを降りるつもりだったから、困ったことになったと思った。結局、計画より1台早いこのバスで亘理駅に行き、電車で浜吉田駅を往復すればいいということに思い至った。で、急いでこのバスに飛び乗ったのである。12:30、相馬駅発。 発車した瞬間に、駅舎の写真を撮っていなかったことに気付いた。一瞬あきらめかけたが、バスが駅前を転回する時に車窓から何とか一枚撮ることができた。まあ、これで良しとすることにしよう。 さて、発車した代行バスはこれも基本的に国道6号線を走行して行った。最初の駒ヶ嶺(こまがみね)駅は国道に近く、駅の位置も動かさないことになっていたようで、駅前に入って行った。 浜吉田駅バス停。 13:30、代行バスは亘理(わたり)駅に着いた。 亘理駅の駅舎外観。こちらから撮るとどうということもないが、 これが建物正面。悠里館と墨書された大層な木の看板が掛かっていた。 さて、駅の方だが、みどりの窓口の付いた業務委託駅。 一駅なので「かぶりつき」に立った。浜吉田駅に入って行く。 14:47、岩沼駅で下車。 みどりの窓口とNEWDAYSがある有人駅である。 駅舎外観と駅前の様子。 さて、これで今回の常磐線の旅は終わりである。岩沼駅15:23発、東北本線・上り福島行きに乗車した。
by krmtdir90
| 2016-03-20 22:55
| 鉄道の旅
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