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主なテーマ、最近は映画ばかりになってしまいましたが、この何年か海外旅行にも興味があって、もともとは鉄道旅、高校演劇、本などが中心のブログだったのですが、年を取って、あと何年元気でいられるかと考えるようになって、興味の対象は日々移っているのです。
by natsu
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映画「ドクトル・ジバゴ」

 最近の映画館はほとんど複数のスクリーンを持つシネコンになってしまったようだが、その一つである立川シネマシティで「午前十時の映画祭」というものをやっている。中規模のスクリーンで午前十時から一回だけ、往年の名作映画をデジタル上映するという企画である。今年でもう7回目(7年目)を数えているらしい。すっかり巷間から姿を消してしまった名画座の役割を、シネコンの中に復活させた感じになるのだろう。
 おかげで、懐かしい「ドクトル・ジバゴ」に映画館のスクリーンで再会することができた。いまはその気になればDVDでいつでも見ることができる時代になったが、こうした思い入れのある大作の場合は、やはりちゃんとしたかたちで見られるというのは素晴らしいことである。始まりから、スクリーンには何も映らないオーバーチュア(序曲)の胸躍る時間、さらに5分間のインターミッション(休憩)も、きちんとその通りのかたちで上映してくれた。昔を思い出し、久し振りのワクワク感を味わわせてもらった。

 家に帰ってから、部屋で初公開時のプログラムを探し出した。
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 表紙に有楽座と書いてある。有楽座は特別な映画館だったのだ。ネットで調べてみると、「ドクトル・ジバゴ」の日本公開は1966年6月18日だったようだ。その頃の大作映画に見られた70ミリ・パナビジョンという上映方式で、これに対応した映写機のある劇場は当時限られた数しかなく、そういう選ばれた劇場でのでのロングランだったのである。実は今回、わたしが若い頃に見た映画を(題名と日にちを)逐一記録しておいたノートも探し出した。それによると、わたしが有楽座で初めてこれを見たのは1966年9月17日となっていた。
 この映画はその後何回かリバイバル公開され、わたしは1969年10月と1976年12月にもこれを見ていることが記録されていた。69年は70ミリ、76年はシネラマと書いてあるから、76年の時はテアトル東京での上映だったのかもしれない。

 「ドクトル・ジバゴ」はソ連の作家ボリス・パステルナークの同名の小説の映画化である。原作はロシア革命を否定的に描いた作品とされたためソ連国内では発表の道を閉ざされ、1957年にイタリアで出版されて世に知られることとなった。翌58年にはノーベル文学賞がパステルナークに授与されたが、ソ連共産党から受賞すれば国外追放という圧力がかかり、パステルナークは「母国を去ることは死に等しい」と述べて受賞を辞退したということが伝えられていた。
 日本で翻訳出版されたのは1959年のことで、出版社は時事通信社、訳者の原子林二郎氏は文学には全く門外漢の時事通信社の記者だったようで、この出版がノーベル賞をめぐる政治的な経過を受けた緊急的なものだったことが窺えるのである。ともあれ、わたしは映画を見たあと、この上下2巻の原作を購入して読んでいる。とにかくこの映画に夢中になってしまったことは確かで、そういうあれこれが懐かしく思いだされる今回の再会だった。

 ロシア語の原作を英語で映画化するというのは、制作者側としてもそれなりの違和感を前提としていたものだろうが、当然のことソ連国内での撮影も公開も一切考えられない中で、これほどのスケールでそれをやってしまうのは凄いことだと思う。監督デヴィット・リーンにとっては、「戦場にかける橋」「アラビアのロレンス」(いずれもアカデミー賞受賞作)に続く作品ということで、この作品は作品賞や監督賞は逃したが、恋愛映画という側面でこの監督の見せる情熱的だが品位のある描き方というのは、当時のわたしには非常に好ましいものに思われたのだと思う。
 わたしがこの映画に出会った1966年という年は、まだ大学生にもなれていなかったのに(勉強しないで)映画はたくさん見て、映画というものにのめり込んでいった頃だったと思う。そのころ見た映画からわたしが受けた影響というのは、いまにして思うと、思った以上に大きなものがあったと感じた。登場人物たちに対する共感というか思い入れというか、また様々な(小さな)シーンに対して心が共鳴する感覚といったものが、この「ドクトル・ジバゴ」には随所にあると思った。

 この映画は有無を言わせず好きだったのだと再確認した。モーリス・ジャールの音楽の巧みさが、この映画に流れていたロマンチックな情感を決定づけていたことも再認識した。恋愛というものが(映画の中を除けば)まだ先の方にあった当時のわたしには、時代の大きなうねりに翻弄される恋愛というのが好みだったのかもしれない。
 この歳になって再会した「ドクトル・ジバゴ」では、主人公ユーリー・ジバゴ(オマー・シャリフ)とラーラ(ジュリー・クリスティー)、そしてトーニャ(ジェラルディン・チャップリン)といった中心にいた人物もそうだが、パーシャ→ストレーリニコフ(トム・コートネイ)やコマロフスキー(ロッド・スタイガー)、エフグラフ(アレック・ギネス)といった、脇にいた人物たちの思いもよく見えてきたように感じた。数十年の歳月を経た再会というのは、映画の場合は昔と寸分違わない映像がそこに映し出されるわけで、その故の新鮮な初体験というのがあるのだと思った。

 映画ではプロローグとエピローグというかたちで、メインストーリーから20年ほどが経過した時点のエピソードを付け加えている。ユーリーの異母兄であるエフグラフが、姪にあたるユーリーとラーラの忘れ形見を探し当てていくシーンである。この、ダムで働くトーニャという娘を演じたのがリタ・トゥシンハム(1963年日本公開のイギリス映画「蜜の味」でデビュー)で、そのきわめて個性的な相貌が、同様に個性豊かなオマー・シャリフとジュリー・クリスティーの娘に違いないというリアリティを漂わせて、見事なキャスティングだったと思う。
 ただ、最後まで彼女がそうだという確証はなかったのだが、帰って行くトーニャが背に提げていたバラライカがすべてを物語ってみせる(最後にやり取りされるセリフの素晴らしさ!)、この映画的仕掛け(小道具の使い方)の見事さには何度も泣かされた。

 映画の核心にはほとんど触れず、周辺のことばかり書いている感想文になってしまったが、内容を追い始めたらそれこそ際限がなくなってしまうと思うので、今回はこういう書き方で終わりにしたいと思う。「ドクトル・ジバゴ」はわたしにとって、「ウエストサイド物語」と並ぶ出発点の一つとなった映画なのである。 
by krmtdir90 | 2016-07-11 22:07 | 本と映画 | Comments(4)
Commented by yassall at 2016-07-12 00:33
私が初めて「ドクトル・ジバゴ」を見たのは高校1年のとき、1966年ですから、私も有楽座で見たのかも知れません。ビートルズの来日と合わせて、私の青春時代の出発点に位置するような映画でした。冒頭の、ワルシャワ労働歌を奏でながら夜の雪道を行進するデモ隊が騎馬警官が襲撃され、ようやく逃れたパーシャが「もう、カンパニアは終わりだ」とラーラに宣言し、地下活動に入っていくシーンで、なぜか強烈に悲しさのようなものがこみ上げて来たのを覚えています。革命後、白軍との戦闘にあけくれ、軍用列車に乗り込む横顔の孤独感など今でも鮮明です。混乱のモスクワから避難するため、列車を待つジバゴとラーラも印象深く、たどり着いた旧領地の屋敷で狼を追い払うシーンも忘れがたいものでした。
Commented by natsu at 2016-07-12 16:53 x
Yassallさんも見ていましたか。
印象的なシーンはほんとにたくさんあって、挙げ始めたらきりがなくなるのでやめました。
ところで、パーシャをやったトム・コートネイは、この少し前に「長距離ランナーの孤独」という映画に出ていて、強烈な印象が残っていたのです。当時(1960年前後)イギリスには「怒れる若者たち」と呼ばれる作家たちがいて、トニー・リチャードソンという監督がこの映画を撮りました。そして、この一作前に撮ったのが「蜜の味」という映画で、トーニャのリタ・トゥシンハムが主演して強烈な印象を残していたのです。そういう2人が「ドクトル・ジバゴ」で脇を固めていたのが、当時とても嬉しかったのを覚えています。
Commented by nakamura-en at 2016-07-12 19:36
懐かしいです。一人で映画を観に行った初めての作品でした。中学一年生でした。映画はわからないことが多かったのですが、子供らしく興奮していたと思います。帰りに池袋で立ち食いの関西風うどんを食べたことを思い出します。
Commented by natsu at 2016-07-13 08:42 x
いやぁ、nakamura-enさんまで見ていたとは!
確かに当時、ずいぶん話題になった映画だったんですね。それにしても中学一年生って、やはり早熟だった(先見の明があった)んですねえ(笑)。
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