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主なテーマ、最近は映画ばかりになってしまいましたが、この何年か海外旅行にも興味があって、もともとは鉄道旅、高校演劇、本などが中心のブログだったのですが、年を取って、あと何年元気でいられるかと考えるようになって、興味の対象は日々移っているのです。
by natsu
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映画「函館珈琲」

映画「函館珈琲」_e0320083_1315264.jpg
 題名で釣られてしまった映画である。題名に函館みたいな素敵な町の名前を入れて、それに珈琲と来たら釣られる人間は絶対いるだろう。ただし、これはローカルとマニアックの狭い世界に観客を限定してしまうことにもなり、わたしは釣られたけれど、釣られる人はそんなに多いとは思えない。
 1995年に始まった函館港イルミナシオン映画祭というものがあり、その一環であるシナリオコンクールで函館市長賞というのを受賞したシナリオの映画化らしい。そういうことがずっと行われていて、そこから地域の応援を得てオリジナルのストーリーが映画化されるのは素晴らしいことだと思うが、それと映画の善し悪しとはまた別のことである。

 映画を見ながら、これはいろんな意味で説明的な映画だなと思った。たとえば登場人物たちの来歴について、曖昧ではあるがそれぞれに説明がつけられている。また、カットの割り方やシーンの作り方も一々説明的だし、この監督(西尾孔志)は映像を自由に駆使して表現を重ねていくような、映画製作の技術をまだ手に入れていないと感じた。
 一方、出来上がった映画からシナリオ(いとう菜のは)の元の姿を想像するのは難しい。登場人物のことなどはシナリオにも説明的な要素があったのだと思うが、監督がそれをどう料理するかというところで、シナリオはどのようにでも姿を変え得るものだからである。シナリオが手許にないから断定はできないが、この映画が説明的で、もう一つ魅力に欠けると感じられてしまった責任の多くは監督の方にあるだろうと思った。

 シナリオはアマチュアが書いたものとしては、きわめれ良質のストーリーを作っていたのではないか。珈琲を始めとしてトンボ玉、テディベア、ピンホールカメラ、バイクといった、用意された小道具は陳腐な感じもするが、雰囲気作りにはそれなりの役割を果たしていたと思う。ストーリーとしては、大きな事件は何も起こらない一方、絶望的状況も運命的幸運も訪れない。若い男女が一つ屋根の下に生活しても恋愛一つ生まれない。たぶんこの作者は、昔からよくあった若い人間の「自分探し」を、函館というローカリティーの中で描こうとしたのだろう。
 そういう意味で、特段ユニークというストーリーではないし、人物の設定やその絡み方、展開の仕方などもアマチュアが精一杯考えて組み立てた感じがする。でも、映像にするに当たって、もう少し魅力的にすることはできたのではないかと思った。説明的な映像を撮り、説明的な編集をしてしまったのは監督なのだろう。

 ストーリーの最後で、東京に帰ることを決意した桧山(黄川田将也)が、荻原(夏樹陽子)の説得で一転して函館に残り、喫茶店を開店してそこのマスターに収まるという展開はどうなのだろう。函館で開催されたコンクールのシナリオで、函館の映画祭が後押しした映画化では仕方がないのかもしれないが、そんな簡単に解決してしまうの?という疑問が残ったのも事実である。
 みんながいい人であり過ぎて、そのことを押し売りするような大団円は、喫茶店の繁盛する様子や執筆を再開する桧山の様子を映し出しても、何となく嘘くささが先行して納得できなかった。全体を淡々と描くのはいいのだが、登場人物の捉え方が表層的で類型的と言うしかないのは、恐らくシナリオと監督の両方にあった弱点なのだろうと思った。
 登場人物に「函館は時間の流れ方が違う」というようなセリフを言わせてしまうのも、その感覚は判るのだけれどやはり興醒めだし、そういうことは言わずにその感じを出して欲しかったと思った。
by krmtdir90 | 2016-09-27 13:15 | 本と映画 | Comments(0)
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