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主なテーマ、最近は映画ばかりになってしまいましたが、この何年か海外旅行にも興味があって、もともとは鉄道旅、高校演劇、本などが中心のブログだったのですが、年を取って、あと何年元気でいられるかと考えるようになって、興味の対象は日々移っているのです。
by natsu
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農大三高演劇部・東北復興支援チャリティー公演(2017.2.19)

農大三高演劇部・東北復興支援チャリティー公演(2017.2.19)_e0320083_14265363.jpg
 昨日(19日)は東京農大第三高校演劇部の「東北復興支援チャリティー公演」というのに行って来た。会場は吉見町民会館「フレサよしみ」という、車でなければ到底行けない不便な場所にあった。わたしは智くんの車、YassallさんはTさんの車にそれぞれ便乗して出掛けて行った。全員車で行ってしまえば簡単だったのだが、それでは帰りに東松山名物の焼き鳥が食べられないことになる(飲み屋に入って焼き鳥だけ食べるというような恐ろしいことはできない)。それでは楽しみも半減してしまうというものである。駅前の「響(ひびき)」という店できっかり2時間(時間制限なんていう野暮はこの店にはないが、遠方なので自主的に規制を設けてそれをきちんと守ったということである)、4人ともお腹一杯になるまで食べて満足して帰って来た。

 で、農大三高の「公演」のこと(こっちが本題)である。農三はコピスみよし高校演劇フェスティバルで10年以上つき合って来た学校だが、力はあるのになかなかそれが発揮されず、毎回のように不完全燃焼の舞台を繰り返してきたと思う。それが、一昨年(2015年)取り組んだ「もしイタ~もし高校野球の女子マネージャーが、青森のイタコを呼んだら~」(畑澤聖悟作)で、明らかに一皮剥けた素晴らしい舞台を作り上げ、さらに昨年(2016年)の「翔べ!原子力ロボむつ」(畑澤聖悟作)で、その飛躍を確実に自分たちのものにしたのである。県大会では核心を外した曖昧な審査によって無視されてしまう結果となったが、この2作から彼ら(生徒と顧問)が得たものは、そんな勝ち負けに関わらず実に大きなものがあったのだろうと思っている。
 今回の「公演」はこの記念すべき2作を一挙上演し、チケット代500円のうち200円を復興支援の義捐金として寄付するという企画だった。これは(焼き鳥がなくとも)応援に行かなければならないと思った。行ってみたら、「フレサよしみ」は500人規模のホールを持つ予想以上に(失礼)素晴らしい施設だった。こんな不便な場所にもかかわらず、客席の大半(大半…弱?)が埋まる観客を集めていたのは立派なことだと思った。農三のみんながこの公演に賭ける「熱」がびしびし伝わってくる気がした。

 顧問のF先生がパンフレットのご挨拶の中に、この2作品を「上演出来ることを誇りに思っています」と書いている。この言葉は生徒全員が共有している思いを代弁したものだと思うが、顧問としてこんなふうに言えるというのは素晴らしいことだと思う。
 「もしイタ」というのは、2011年の東日本大震災で犠牲となった人々への鎮魂歌とも言うべき作品だが、被災地から遠く離れた自分たちがこれを「上演してもいいのかという疑問」から始まった取り組みだったという。彼らは実際に福島県いわき市の被災地を訪れ、被災した人たちの話を聞いたり被災地を見て回ったりする中で、掛けてもらった「ぜひ上演を」という言葉に背中を押されて練習をスタートさせたらしい。被災地の思いを無関係な自分たちが伝えられるのかという謙虚な原点を持てたことが、それをやり切った時の彼らの「誇り」につながったのだと思う。
 「ロボむつ」は高レベル放射能廃棄物の問題を扱った作品で、その最前線にある青森県むつ市を舞台としているものである。この作品にも、無関係な土地にいる自分たちが「上演してもいいのかという疑問」はあったはずだが、ここでも彼らは茨城県東海村の東海第2原発の原子力館を訪問し、納得できるまで学習した後に芝居作りをスタートさせている。
 演劇という部活動の教育的意義などと大上段に振りかぶるつもりはないが、この2作品で農三演劇部が行った正攻法のアプローチは、彼らに大きな「学び」をもたらし、実際の舞台作りに計り知れぬ大きな影響を与えたのだと思う。自分たちが作っている舞台に、疑いのない自信と誇りを持てるというのは素晴らしいことである。彼らは演劇を通して自分たちのやるべきことを見つけたのである。この間の(2年以上にわたる)取り組みの集大成として、この「公演」を企画した農三のみんなの思いはよく理解できる気がした。

 その上で、芝居の出来については少し厳しいことも書いておかなければならない。
 一本目の「ロボむつ」は地区大・県大の時のキャストがほぼ維持された上演だったはずだが、過去2回の舞台が素晴らしいものだったのと比べて、今回は出来としてはやや落ちてしまったように思った。会場の違いや客層の違いが影響した部分もあったかもしれないが、やる側の集中や配慮が若干欠けていた(雑になってしまった)ような気もした。内容的に、放射能とか廃棄物とかに関する基本的情報を客席に確実に届けなければならない作品だと思うが、そこのところがどうも十分にできていなかったように見えたのである。ホールの問題なのか発声の問題なのか、声量を落としたセリフが総じて聞き取りにくく、客席とうまくつながれなかったように感じられた。あと、照明設備に制約が多かったのか、全体に暗めの舞台になってしまったのも残念だった。どれもほんの少しの調整不足と言っていいもので、上演というのは難しいものだなと思った。
 二本目の「もしイタ」は県大・コピスの時から大幅にキャストを入れ替え、もう一度新たに作り直す感じの上演だったと思う。「ロボむつ」と比べて作品の難易度はやや下がるものの、過去にコピスなどでこの作品の最良のかたちを見せてもらっている者からすると、やはりまだ作りが甘く物足りない印象になってしまったのは仕方がないことだったかもしれない。幾人かのキャストは「ロボむつ」と掛け持ちになっていたが、2本並行しての芝居作りというのは、端で考える以上に厳しい面があったのではないかと感じられた。
 2作品一挙上演というのは農三の「心意気」であり、今回の企画の肝であったことは理解できると思う。しかし、そのために個々の作品に対する丁寧な配慮といったものが若干手薄になってしまったきらいはあったように思った。

 でも、今回の「公演」で最も大切だったものはきみたちの「達成感」だろうと思う。県大で審査員に評価されなかったり、思い通りにならなかったこともたぶんたくさんあったと思うが、県大やコピスの客席の大部分はきみたちを評価していたことを忘れないでほしいと思う。きみたちはこれらの作品に取り組んだことに「誇り」を持っていいのだし、それは必ず農三の「次」につながっていくものだと思う。ちょっと気が早いけれど、秋の舞台を期待して待っています。
by krmtdir90 | 2017-02-20 14:27 | 高校演劇、その他の演劇 | Comments(2)
Commented by とうきょう りゅう at 2017-02-20 22:05 x
コメント、ありがとうございました。また、的確な批評は勉強になります。作品のクオリティは、今までの中ではご指摘のとおりあまりよくありません。でも、部員の心には熱いものがありました。最初、200人以下の規模で芝居を打つ計画でしたが、そんなに宣伝しないうちに完売してしまい、規模を増やしした。自分たちでも何か出来ることがあるという気概がこの公演を実現させました。埼玉新聞から取材された時に、しっかりと自分の思いを話していたことからも伺えます。コンクールとか、順位とかにこだわらない部員は立派でした。顧問として関われた時間は、私にとってとても大切なものになりました。
Commented by natsu at 2017-02-21 20:21 x
開演前と終演後のロビーの雰囲気も印象的でした。開演前は手伝いのOB・OGがとても明るい雰囲気を作っていました。こんな公演をやってしまう後輩たちを嬉しく感じているのが伝わってきました。終演後はとにかくすごい熱気で、みんなのやり切ったという達成感が感じられて素晴らしかったです。きっといつまでも心に残るだろうなと思いました。りゅうさん、これ顧問冥利に尽きるというものですよ。お疲れさん!
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