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わたしは最初の「エイリアン」と「2」は観ているがその後は観ていない。観ているものも例によって細かい点などほとんど覚えていないので、このあたりの経緯や作品のつながりなどは、調べてみるとなかなか興味深いものがあるようだが、そこに深入りすることはやめておく。 いずれにせよ、初作の監督であったリドリー・スコットが、2012年に製作した映画「プロメテウス」において再びあのエイリアンを登場させ、この映画自体は賛否両論あったようだが、同監督がその続編として製作したのがこの「エイリアン コヴェナント」だったようだ。わたしは「プロメテウス」を観ていないし、このあたりのつながりを事前に把握していたわけでもないので、観ていてやや判りにくい部分があったのは確かだが、娯楽映画としては十分楽しむことができたと思っている。 リドリー・スコットが30年以上の時を経てもう一度「エイリアン」に帰って来たのは、時系列的には初作よりも前に遡って(「2~4」とは逆に、このシリーズではまだ描かれていない過去に)、エイリアンという恐ろしい生物がどうして生まれたのかという誕生の秘密を明らかにするためだった。そこにはアンドロイドと人間という新たな対立軸が設定されていて、「プロメテウス」「コヴェナント」ではアンドロイドこそが新たな恐怖の源として登場してくることになったのである。 いまエイリアンの恐怖を描くだけでは二番煎じになることが見えているから、リドリー・スコットの興味はもうそこにはなかった。それに気付くまでに若干の時間がかかった。エイリアンの攻撃の凄まじさは相変わらずこれでもかと描かれるが、そのスリリングなホラータッチは十二分に活用しながら、リドリー・スコットは一方で2人(2体?)のアンドロイドに視点を据えることで、これまでとはまったく異質な恐怖をじわじわと醸し出して見せるのである。彼がやりたかったのはむしろこちらの方で、だとするとエイリアンの描写に時間をかけすぎたために、後半の「種明かし」の部分の描き方はかなり駆け足で乱暴になってしまったように感じた。 宇宙船コヴェナント号に乗り組んでいるアンドロイドはウォルターという名前である。それに対し、映画の中盤で登場してくるもう一人のアンドロイドはデヴィッドという名前を持っていた。そして、このデヴィッドは10年前に消息を絶った宇宙船プロメテウス号に乗っていたアンドロイドだったということらしい。このことが今回のストーリーの鍵になっているのだが、前作「プロメテウス」を観ていない者にも必要なだけの情報は入っているからつながりは判ったけれど、そこにあるストーリーが腑に落ちたかといえばやや不満が残る結果になっていたと思う。 このウォルターとデヴィッドを二役で演じたのがマイケル・ファスベンダーという俳優で、アンドロイドらしい無表情・無個性の雰囲気を漂わせながら、両者の微妙な(しかし決定的な)違いを演じ分けていたということのようだ。観る側としてはそのあたりが判りにくかった感じは否めず、最後の「すり替わり」(あれ、ネタバレか)のところも、わたしはしばらく意味が判らなかった。結果的にアンドロイド(デヴィッド)とエイリアンが結びつき、邪悪なるものの勝利で終わるエンディングになっていることも併せて、そこに説得力があったかといえば疑問符が付くような気がした。 恐らく初作の「エイリアン」以降、このシリーズがエポックメイキングな大ヒットを記録したことが、最初にこれを生み出したリドリー・スコットをこんなふうに動かしたのだろうが、今回のストーリーに登場する邪悪なる生物(兵器)はエイリアンのイメージである必然性はなく、むしろまったく異なるイメージで出現させた方が面白かったのではないかと感じた。エイリアンがこんなふうに生まれた(作られた)のだという「出自」を作ってしまったことは、かつての映画でエイリアンが持っていた底知れぬ不気味さを無化してしまう結果となってしまったのではないだろうか。それは何だか納得できないという気分が残るのである。 (立川シネマシティ2、9月26日)
by krmtdir90
| 2017-09-27 13:22
| 本と映画
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