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主なテーマ、最近は映画ばかりになってしまいましたが、この何年か海外旅行にも興味があって、もともとは鉄道旅、高校演劇、本などが中心のブログだったのですが、年を取って、あと何年元気でいられるかと考えるようになって、興味の対象は日々移っているのです。
by natsu
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「未来の年表/人口減少日本でこれから起きること」(河合雅司)

「未来の年表/人口減少日本でこれから起きること」(河合雅司)_e0320083_16513066.jpg
 数年前、日本創世会議・人口減少問題検討分科会が発表した「将来推計人口と消滅可能性都市896」のリストが大きな話題になった。このレポートは25年後となる2040年を想定して、人口減少によって全国の自治体がどういうことになってしまうのかを描いて見せたものだった。この時は増田寬也氏の唱えた対応策に山下祐介氏を始めとする多くの反論が提起され、地方自治体をどうするのかという視点で様々な議論が巻き起こった。
 今回、著者の河合雅司氏は当然これらの議論を踏まえつつも、もっと全体を俯瞰するような視点で人口減少の問題点を浮かび上がらせようとしたようだ。「はじめに」の中で氏は次のように述べている。
 書店には少子高齢社会の問題点を論じた書物が数多く並ぶ。しかし、テーマを絞って人口減少社会の課題を論じるにとどまり、恐るべき日本の未来図を時系列に沿って、かつ体系的に解き明かす書物はこれまでなかった。それを明確にしておかなければ、講ずべき適切な対策とは何なのかを判断できず、日本の行く末を変えることは叶わないはずなのに、である。

 本書は200ページほどの簡易な新書だが、その約7割を使って今後50年ほどの間に起こるであろう事態を、時系列に沿って可能な限り具体的に説明している。その根拠となっているのは、国立社会保障人口問題研究所というところが2017年に出した「日本の将来推計人口」というデータのようだが、それに基づく河合氏の考察は、少子化も高齢化も現在進行形の事態であって、これに歯止めをかけることはできないという明快な前提に立っている。
 1949年に269万6千人あまりだった(戦後のベビーブームだ)年間出生数は、2016年には97万6千人あまりに落ち込み、初めて100万人の大台を割ったのだという。母集団が小さくなっているのだから、歯止めも何も、上記研究所の推計では2065年には出生数は55万7千人になってしまうと予測されているようだ。子どもが生まれないのだから人口が減るのは当然のことで、2017年に1億2653万人だった日本の総人口は、2065年には8808万人ほどになると予測されている。河合氏は「こんなに急激に人口が減るのは世界史において類例がない。われわれは、長い歴史にあって極めて特異な時代を生きているのである」と述べている。

 2065年にはわたしはもう生きてはいないが、子どもや孫たちは恐らく生きているだろう。半数の自治体が消滅すると予測されている2040年には、孫たちはちょうど働き盛りの年齢に差しかかっているはずである。その時、日本の社会は果たしてどんな姿になっているのか。本書が描き出す未来図は少しセンセーショナルに書かれているところがあるのかもしれないが、引用されている様々なデータの数字はすべて事実なのである。わたしは(たぶん)「逃げ切れる」からといって、この問題は無関係と切り捨てる気にはどうしてもなれない。
 本書でも繰り返し触れられていることだが、この人口減少が急激な高齢化とともに進行していることは重大である。何歳からを高齢者と考えるかは意見の分かれるところだが、2024年の日本では国民の3人に1人が65歳以上、6人に1人が75歳以上になると計算されている。一応わたしもそのくらいは生きていたいと願っているが、この時、老後の生活の基盤となる社会保障制度や医療・介護といったところは果たしてちゃんと機能しているのだろうか。
 いまから僅か10年足らず先の話なのである。本書は、恐らく10年も経たないうちに、日本社会のあちこちの場面に重大な影響が出ているだろうと予測している。これは決して絵空事ではない。

 それは、次々に高齢化していく世代の後を埋めるべき、働く世代の減少(社会の支え手の不足)という問題があるからである。少子化に歯止めはかからないのだから(その根拠は本書の中で明確に説明されている)、この事態は今後ますます深刻化していくはずである。このままでは、現在はあるのが当たり前と思っている便利で豊かな生活も、それを支える様々な分野で、その機能が維持できなくなってしまう可能性が高いと述べられている。
 河合氏は年を追って考えられる様々な問題を、きわめて広範囲から拾い上げている。その幾つかを書き写してみよう(カッコ内は、その例が挙げられている本書時系列における年次)。
 2016年の時点で44%の私立大学が定員割れとなっているが、今後、地方の国立大学も含めて、多くの大学が倒産の危機に晒されるだろう(2018年)。社会インフラの老朽化が進み(水道事業が例示されている)、一方で利用者減が進行する中では、それらの維持・更新が難しくなっている(2019年)。様々なインフラを支える技術者の不足と高齢化も深刻になっており、とりわけIT分野における技術者不足は今後拡大するばかりである(同年)。介護・医療にかかる経費の増大を受けて、政府が介護政策を在宅にシフトしている結果、働き盛りの40~50代を中心に介護離職者が大量に発生する(2021年、いわゆる老老介護の問題は2024年)。高齢化に伴って認知症患者も増大しており(2025年で730万人、65歳以上の5人に1人)、在宅では認認介護という現実も広がっていく(2026年)。若年層の減少により、献血者の不足から輸血用血液の不足が深刻化する(2027年)。生産年齢人口の極端な減少で、全国の都道府県の80%が生産力不足に陥り、百貨店・銀行・老人ホーム、さらには映画館やハンバーガー店なども地方から消えて行く(2030年)。全国の住宅の3戸に1戸が空き家になる(2033年)。国内死亡者数がピークを迎え、深刻な火葬場不足に陥る(2039年)。・・・。

 書いているときりがないのだが、これらの事態はいずれも、裏付けとなる詳細なデータとともに示されていて、そうなってから慌てて対策を考えてもどうにもならないことばかりである。河合氏は、もはや漠然とした希望的観測や楽観論は捨てなければならないと警鐘を鳴らす。できるだけ早急に国のかたちを作り替えなければならないと述べる。「求められている現実的な選択肢とは、拡大路線でやってきた従来の成功体験と訣別し、戦略的に縮むことである」と述べている。
 だが、それは簡単なことではない。本書は続く3割のページを使って、「日本を救う10の処方箋」なるものを具体的に提案している。だが、ここにくると、その容易ならざる状況から、本当にそんなことができるのかという、少々現実離れした論調が急に目立ち始めるように思われた。だが、河合氏の真剣な提案に、わたしなどが軽々な感想を差し挟むことは控えなければならない。
 実際、どういう対策を講じるにせよ、人口減少や少子高齢化を一気に解決できるような妙案などあるはずもなく、その進行を少しだけ遅らせることしかできないのである。

 確かに、これから確実にやって来る困難な事態をトータルに把握し、そこから生じる一つ一つのテーマをを長期戦覚悟で、今後の行政や政治の課題として地道に取り組んでいくしかないということなのだろう。対処療法で問題を先送りするばかりでは、事態の悪化が日本の社会構造を根本から蝕み、それらを一気に台無しにしてしまうような日が近付いているのだ。きわめて深刻な岐路にいまの日本はさしかかっているのである。
 本書では触れられていないが、働き手の不足がすでに各所で顕在化していることなどは、少し注意すればわたしの周囲でもいろいろ実感されるようになっている。運送業に関わるトラック運転手の不足(それと高齢化)は慢性的になっているようで、宅配業者が荷物の受け入れ総量を減らす方向で動き始めたことがニュースになっていた。引っ越し業者の運転手不足もひどいようで、この春には大量の引っ越し難民(入学や転勤に引っ越しが間に合わなくなる)が出るだろうというニュースがつい先日出ていた。
 どんどん減り続ける働き手のことを正しく認識すれば、その実情に合わせた業界内の仕組みの作り替えが必要なのだが、ほとんどのところで現状を維持することが至上命題になってしまうから、歪みは大きくなるばかりなのだろう。働き手が減れば労働の総量は減るのが当然で、効率化だの何だのは長時間労働の言い訳にしかならないのである。

 本書はすでにかなりの反響を巻き起こしているようだが(帯に「30万部!」と書いてある)、ここに示された内容は特に若い世代にとっては対岸の火事ではないだろう(もちろん高齢者にとっても無関係で済ませられることではない)。この本に関連して、今後どのような議論がなされていくのか注視していきたいと思う。
by krmtdir90 | 2018-02-25 16:48 | | Comments(2)
Commented by Mh at 2018-02-25 22:18 x
僕も少し前に読みましたが、最近色々な所で現実になりつつあるなと感じる事がありますね。悲しい事ですが。
Commented by krmtdir90 at 2018-02-26 09:19
やっぱり気になるよね。
いま議論されている様々な政治課題が、どれもこの問題につながっていることを前提にしなければならないと思うのだが、みんな何となく目を背けている感じで、政治にこのことへの危機感が欠けていると感じます。
なんで日本はこんなことになっちゃったんだろうね。
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