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主なテーマは鉄道旅、高校演劇、本と映画、それから海外旅行、その他少々、といったところ。退職後に始めたブログですが、年を取ったせいか、興味の対象は日々移っているようです。よろしく。
by natsu
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映画「タクシー運転手/約束は海を越えて」

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 韓国映画というのはほとんど観る気がしないのだけれど、この映画は1980年5月に起こった光州事件を扱ったものだというので、ちょっと行ってみる気になった。あまり期待しないで行ったのだが、出来としてはまあそれなりに予想以上のところもあったと思う。

 光州事件というのは、クーデターによって実権を握ったチョン・ドゥファン(全斗煥)の発した戒厳令に対し、国内各地に発生した市民・学生らによる抗議行動のうち、特に盛り上がりを見せた光州市において、戒厳軍が武器を用いた鎮圧を行って多数の死傷者を出した事件である。光州市は軍によって外部と完全に遮断され、全土で厳しい報道管制が敷かれたため、当初ここで起こった出来事はなかなか外に伝わらなかった。
 そうした中で、わずかな情報を頼りに危険を冒して光州市に入り、軍による弾圧の実態を広く世に知らしめたドイツ人記者ユルゲン・ヒンツペーターと、彼を光州市まで送迎したソウルのタクシー運転手キム・サボクという、二人の実在人物をモデルとしてこの映画は作られている。

 だが、実際にあったことだからといって、映画は事実にあまり縛られるような作り方にはなっていない。むしろ、娯楽作品として、観客に受けるような作り替えや誇張が随所に見られて、その割り切り方が韓国国内での大ヒットにつながったのだと思われた。したがって、そういう意味では「何だかなあ」と思うところもたくさんあったのだが、それでも韓国現代史において最大の悲劇とされる光州事件の実相は、かなりしっかりと描き込まれていたと感じた。
 特に、運転手キム・マンソプ(ソン・ガンホ)を、政治などにはまったく無縁のところで生きてきた平凡な男と設定したところが良かったのではないか。成り行きからいつの間にか深刻な事態に巻き込まれていき、そこでの悲惨な現実を目の当たりにするうちに、徐々に怒りと正義感を募らせていくという展開は巧い。かなりご都合主義の安直な展開も見られるのだが、上記のような一本の筋を通したことによって、そういう安易さも許していいような気持ちにさせられてしまう。
 最初は高額な乗車料金を払ってくれるカモとしか思っていなかったのに、ドイツ人記者ピーター(トーマス・クレッチマン)の行動に付き合っていくうちに、次第に共感と親近感を覚えていく過程がなかなか面白い。記者ピーターの方も、当初はただ利用するだけのタクシー運転手に過ぎなかった相手が、見かけによらず誠実で心優しい男なのだと徐々に理解していく。二人が最後にソウルの空港で別れるシーンは、抑制された程良い描き方で好感が持てた。

 光州市内で彼らに絡んでくる人々については、一方はあまりにいい人たち過ぎるし、一方はあまりに悪役過ぎてちょっと引いてしまう感じがあった。背景となった光州事件の様子はしっかり再現されていたと思うが、これもまた戒厳軍の容赦ない残虐さがやや強調され過ぎていたのかもしれない。現代の韓国からすればこれらは完全に否定されるべきものだから、韓国の観客にとってはこのあたりがちょうどいい描き方だったのかもしれない。
(立川シネマシティ1、4月24日)
by krmtdir90 | 2018-04-25 12:59 | 本と映画 | Comments(0)
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