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主なテーマ、最近は映画ばかりになってしまいましたが、この何年か海外旅行にも興味があって、もともとは鉄道旅、高校演劇、本などが中心のブログだったのですが、年を取って、あと何年元気でいられるかと考えるようになって、興味の対象は日々移っているのです。
by natsu
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映画「ザ・スクエア/思いやりの聖域」

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 非常に感想の書きにくい映画だと思う。いろいろと感想はあるのだが、映画そのものがきわめて多彩な側面を持っているので、感想としてなかなかまとまりのあるものにはならないのだ。

 主人公のクリスティアン(クレス・バング)は、有名な現代美術館のキュレーターと設定されている。キュレーターというのは初めて聞く職種だが、舞台で言えば劇場の芸術監督といった位置付けになるだろうか。美術館では展覧会などの企画を立て、それを成功裏に実現していく責任者といった存在のようだ。それなりの才能と学識を持たなければ、誰でも簡単に就くことができるような職業ではないのである。職業と言うより地位と言った方がいいかもしれない。現代アート界というものを考えれば、彼はその中心部分で華やかに活躍している有力者なのである。
 自他共に認めるこうしたエリートを主人公に据え、映画はその彼の日常的な行動を追っていく。そこに、彼の中にある自信や矛盾や欺瞞といった多面性と、現代社会の様々な問題とを絡み合わせて見せていく。それらがぶつかり合ったり行き違ったりする様子を描き、この男は立派なことを言ったりやったりしているように見えるけれど、何かおかしい(ズレている)のではないかといったことを徐々に浮かび上がらせていくのである。扱われるテーマは単一ではなく、実に多様な要素が関係し合いながら次々に俎上に上ってくる感じになっている。

 それは、普段は気が付かなかったり見過ごしたりしている、人間の中の(誰にでもある)負の側面とでも言うべきものである。一応のストーリーはあるが、むしろそこから派生する様々な枝葉の場面を描写することの方に力点が置かれていて、バランスを欠いて配置されるそれらのシーンの皮肉な面白さといったものが、この映画の見どころになっているように思われる。151分という上映時間の長さはここから来るもので、リューベン・オストルンド監督の視点の際立った特徴がここに表れているようである。
 映画の中で、主人公のクリスティアンは非難されたり嘲笑されたりしているわけではない。オストルンド監督は特定の観点から彼を決めつけたり追及したりはしないのだ。彼や彼の周囲にあるものは、ただ見詰められるだけで自然にその内実の矛盾や曖昧さを露呈させてしまうのである。監督の視線は情緒を前面に出すようなものではなく、一貫して冷静で少しだけアイロニカルな色彩を帯びている。辛辣さとか批評性といったものには満ちているが、冷ややかというのとは明らかに違っている。一言で言えば、非常に知的な企みを持った映画なのである。

 クリスティアンが企画している「ザ・スクエア」という展示は、美術館の前庭や展示室に四角形(スクエア)のエリアを設置し、その枠内を「信頼と思いやりの聖域」とするプロジェクトである。傍らには「この中では誰もが平等の権利と義務を持っています。この中にいる人が困っていたら、それが誰であれ、あなたはその人の手助けをしなくてはなりません」という言葉が添えられている。個人主義が蔓延し、非寛容な傾向が日々強まっている現代社会に対し、人道的な立場からの啓発を行おうという試みらしい。その言わんとするところに異は唱えにくいが、それでは、これを推進しようとしている人々はいったいどんなことをしているのですか?というのが、この映画の基本的な視点になっている。
 ここには、格差の拡大とか貧富などによる差別意識、あるいは人間のエゴイズムとか排他性、当事者意識と傍観者意識といった様々な問題が絡んでいる。誰も無関係とは言い難いことばかりで、ある種の居心地の悪さがこの映画には漂っていると言っていい。観ている時は面白いのだが、後に小骨が刺さって抜けなくなっているような不愉快な感覚が残るのである。恐らくそれがこの映画の意図したところなのだろう。

 因みに、この映画はカンヌ映画祭で最高のパルムドールを受賞したらしい。福祉大国と言われるスウェーデンで(ドイツ・フランス・デンマークと合作)こういう映画が作られたことが興味深い。こんな映画もあるのだ。
(立川シネマシティ1、5月1日)
by krmtdir90 | 2018-05-03 23:59 | 本と映画 | Comments(0)
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