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主なテーマは鉄道旅、高校演劇、本と映画、それから海外旅行、その他少々、といったところ。退職後に始めたブログですが、年を取ったせいか、興味の対象は日々移っているようです。よろしく。
by natsu
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映画「孤狼の血」

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 こういう映画を年に何回か無性に見たくなる。こういう映画というのは、ヤクザやチンピラや暴力団が抗争を繰り広げる映画なのだが、最近はそういう映画がなかなか見られなくなってしまった。この映画の予告編をどこかで見てから、ずっとこの封切りの日を待っていたような気がする。岩に砕ける波しぶきの東映マークが出て、いやが上にも期待は高まった。こういう映画には似合わない製作委員会方式が採られたようだが、出来上がった映画は東映が元気だった時代を十分に彷彿とさせるものになっていた。期待通りだったと言っていい。日本映画では、こういうストレートに危ない映画を年に何回かは見たいものだと思う。

 この映画は、暴力団の抗争を向こうに回して闘う常識外れの無法マル暴刑事と、それとコンビを組まされた新米刑事の二人組を描く、いわゆるバディものというジャンルの映画だった。広島県呉市でオールロケを敢行したらしいが、架空の呉原市というのが舞台になっていて、行き交う広島弁はあの「仁義なき戦い」をかなり意識しているということなのだろう。
 呉原東署刑事二課の巡査部長・大上章吾というのがそのマル暴刑事なのだが、その捜査手法たるや暴力団も顔負けの無茶苦茶ぶりで、最初から違法かどうかというような視点はまったく持ち合わせていないのである。ベテラン役所広司がさすがの存在感で、この役を伸び伸びと楽しそうに演じている。
 コンビを組まされた広大出の新米巡査・日岡秀一を松坂桃李が演じていて、最初はとてもついて行けない感じの反撥から始まって、次第に大上という刑事の本当の姿を知って行くにつれ、その「孤狼の血」を受け継いでいくというのがストーリーの骨子となっている。ストーリー的に役所の方が主役かと思いきや、彼は終盤近くであっさり殺されてしまい、実はこの日岡が主人公だったという展開は面白かった。松坂桃李というのは初めて見る役者だったが、その終盤あたりの変貌をなかなか見事に演じ切っていて感心した。

 監督の白石和彌はあの「日本で一番悪い奴ら」(2016年)の監督だが、今回の映画でその力量を遺憾なく発揮したと思う。この吹っ切れた撮り方は誰でも簡単にできるものではない。いま東映でこういう映画を撮ることへの覚悟のようなものがひしひしと伝わってきた。テレビでは絶対に放映できないような危ないシーンが続出するし、あまりえげつないのは好きではないが、まるでたがが外れたような過激な暴力描写などは、ここまでやるのかとびっくりした。まったく突然に、そういうものがマックスのかたちで噴出する感じは怖かった。
 こういう世界を描く時、東映というブランドが用意する役者の顔ぶれはやはり凄い。呉原市に対峙する2つの暴力団組織を始めとして、様々に配置された人間関係を構成する役者たちの存在感が半端ではなかった。一々挙げていくとキリがなくなるが、江口洋介(尾谷組若頭・一之瀬)、竹野内豊(加古村組若頭・野崎)、ピエール瀧(右翼団体代表)、石橋蓮司(加古村組の上部団体会長)といったところを始めとして、一癖も二癖もある面々が実に贅沢にキャスティングされていた。呉原の人気クラブ「梨子」のママをやった真木よう子も良かった。

 この映画には同名の原作(柚月裕子作)があったようで、それは2015年下半期の直木賞候補作になっていたらしい。ちょっとインターネットで選考経過を調べてみると、残念ながら9人の選考委員全員が否定的な意見を述べていた。映画でも感じたことだが、ストーリー展開のポイントとなる死体の処分方法で、船があるのだから沖に出て海底に沈めればいいものを、わざわざ島に上陸して埋めてきたというところなど、ご都合主義と言われても仕方がないと思った。
 また、映画では原作にない薬局の娘・桃子という役(阿部純子)が作られたようだが、松坂桃李の日岡とのエピソードが非常に生きていたと思った。大上が吸っていたハイライトを小道具としたラストシーンも洒落ていて良かった。映画になって原作にふくらみが出て、人物にリアリティが注入されたということなのかもしれない。元々、別にだからどうだというストーリーではないが、映画が違和感なく面白く見られるかどうかは、現実離れしたストーリーであればあるほど、登場人物の存在感が重要なのだということがよく判る映画だったと思う。
(MOVIX昭島、5月12日)
by krmtdir90 | 2018-05-14 22:37 | 本と映画 | Comments(0)
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