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主なテーマ、最近は映画ばかりになってしまいましたが、この何年か海外旅行にも興味があって、もともとは鉄道旅、高校演劇、本などが中心のブログだったのですが、年を取って、あと何年元気でいられるかと考えるようになって、興味の対象は日々移っているのです。
by natsu
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映画「ヒトラーを欺いた黄色い星」

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 イントロダクションからアウトラインを抜き出しておくと次のようになる。
 第二次世界大戦下の1941年から1945年にかけて、ナチスに虐殺されたヨーロッパのユダヤ人は約600万人と言われている。そのうち17万人はドイツ国籍だった。1943年6月、ナチス宣伝相ゲッベルスは、首都ベルリンからユダヤ人を一掃したと正式に宣言した。しかし、事実はそうではなかった。約7000人ものユダヤ人がベルリン各所に潜伏し、最終的に約1500人が戦争終結まで生き延びた。この映画は、実際の生還者へのインタビューに基づき、彼らがどのようにして困難な逃亡生活を生き延びたのかを明らかにしようとしたものである。

 これはドキュメンタリー映画ではない。だが、インタビューに答える実際の人物の映像が何度も挟み込まれているから、その部分に関してはドキュメンタリーなのである。映画は彼ら4人の語り手に導かれるように、若かった彼らの苦難の日々をドラマとして描き出していく。敢えて言えば、ドキュメンタリーによるドラマとでも言うべき形式によって、4人それぞれの潜伏の様子が明らかにされていくのである。4人の俳優によって演じられた彼らの過去の姿に、実際の老いた4人の言葉がリアリティを与えていくような作りになっている。この形式が非常に新鮮で効果的だったと思う。
 この4人は、実際の潜伏生活の中ではお互いに出会うことはなく、そういう意味ではまったく別個の4つのストーリーが平行して語られていくようになっている。そのため、それぞれの人間関係や展開を追うのが若干難しいところはあったものの、現在の4人のインタビュー映像がそれをうまく補い、整理するような働きをしていたと思う。クラウス・レーフレ監督によって選び出された4人は男女2人ずつで、潜伏開始時には16~20歳の若者だったという。家族や親しい人々と別れて一人で身を隠していく心細さはいかほどのものであったか。

 もちろん、何年にも及んだ彼らの潜伏生活が成功したのには、彼らを匿ったり助けたりしてくれた多くのドイツ人の存在があったことが大きい。ひとたび見つかればみずからの命も危なくなるようなそうした行為を、無償の善意で勇気を持って行った人々がいたのである。その姿もこの映画は丁寧に描き出している。それは大半が平凡な市井の人々であって、中には抵抗の姿勢を明確に持っていた人もいたかもしれないが、多くは困った人をそのままにはできないという思いから、深く考えることもなく選び取られた行為だったように見えるのである。声を上げることはできなくても、ナチスのやり方をおかしいと感じ、ユダヤ人を助けたいと思っていた普通のドイツ人もたくさんいたということなのである。
 とはいえ、監視や密告なども横行していた厳しい状況下で、誰を信じていいのかまったく判らないところでは、ユダヤ人であることを隠して生きていくことは困難極まりないことだったに違いない。外では顔見知りと出会うことを極度に警戒しなければならず、内でも家主の友人やゲシュタポの来訪を常時恐れながら生活するしかなく、その息苦しさは大変なものだったと思われる。ユダヤ人の中には命と引き換えにゲシュタポのスパイとなった者もいて、4人の一人がそれと気付いてすれ違うシーンは(見逃してくれたのだけれど)怖かった。

 4人がたどった潜伏生活はいずれも波乱に満ちたものだったが、中でもツィオマ・シェーンハウス(演じたのはマックス・マウフ)のそれはとりわけ興味深いものだった。彼は手先の器用さを生かして身分証を偽造し、出征を控えたドイツ人兵士に成りすまして市内の空室を泊まり歩いている。ある時、ユダヤ人を支援するカウフマンという謎の男に見いだされ、その技術でユダヤ人向けの大量の身分証を偽造することになるのである。このことで高額な報酬を得た彼は、その後不注意からこれが発覚して追われる身となり、最後は単身スイスに脱出することになったらしい。
 また、ルート・アルント(演じたのはルビー・O・フィー)も予想外の潜伏生活をたどった。友人のユダヤ人女性とともに戦争未亡人を装っていた彼女は、偶然の成り行きからドイツ国防軍のヴェーレン大佐宅で二人してメイドとして雇われることになるのである。邸宅では連日のように軍関係者がパーティーなどを開いていて、そうした中で、どうやら大佐は彼女たちがユダヤ人であることを知りながら働かせていたらしいことが判明する(匂わされている)。彼の真意は不明だが、ユダヤ人が生き抜いた中にはそんな思いがけない運命のいたずらもあったのである。

 映画には当時のニュースフィルムなどのモノクロ映像も挿入され、次第に空襲が激しさを増していくベルリンの様子から、戦争の終わりが(ナチスの敗北が)近付いていることを映し出していく。隠れていた彼らにとって、解放の日は突然にやって来た。ベルリンに侵攻したソ連軍の兵士に踏み込まれ、ここにはユダヤ人はいないはずだと追及されて、今度は自分たちが(ドイツ人ではなく)ユダヤ人なのだと証明しなければならない皮肉なシーンも描かれている。みずからもユダヤ人だったらしい一人のソ連兵士と彼らが、固い抱擁を交わすシーンは感動的だった。
 彼らが生き延びることができたのは素晴らしいことだったが、一方で7000人のうち5500人は命を落としているのである。彼らに手を貸したため、逮捕され処刑されてしまったドイツ人もいたはずである。映画の途中には、収容所を脱走してきた2人のユダヤ人が、現地で大量虐殺が行われていることを潜伏している同胞に知らせるシーンもあった。事実を知ったユダヤ人の衝撃は想像を絶するものであっただろう。
 ドイツ映画がいまもこの問題と向き合い、こういう映画を作り続けていることには敬意を表するしかないと思う。ナチス時代の隠れた史実を明らかにした佳作だったと思う。
(新宿武蔵野館、8月3日)
by krmtdir90 | 2018-08-04 18:43 | 本と映画 | Comments(0)
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