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主なテーマ、最近は映画ばかりになってしまいましたが、この何年か海外旅行にも興味があって、もともとは鉄道旅、高校演劇、本などが中心のブログだったのですが、年を取って、あと何年元気でいられるかと考えるようになって、興味の対象は日々移っているのです。
by natsu
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映画「縄文にハマる人々」

映画「縄文にハマる人々」_e0320083_1242082.jpg
 ドキュメンタリーということになっているらしいが、製作意図というか、製作の方向性がはっきりしない映画だなと思った。縄文時代に興味を持った監督(山岡信貴)が、縄文にハマっている人々にインタビューして回ったり、日本各地の博物館で見た土器や土偶などを記録しているのだが、編集の手際が悪いのか、どうも雑然としていてまとまりがないという印象を受けた。
 監督としてどういうところにフォーカスしたいのかがはっきりしていない感じで、あれもこれもといろいろ並べてはいるものの、結局バラバラで統一感のないまま終わってしまったような気がした。最後のあたりで何やら思わせぶりなイメージが出てくるのも意味不明で、たとえばけっこうグロテスクな動物の屠殺シーンなど、どういう意図でここに挿入されたのか理解できなかった。もっと説明的であるべきだということではないが、それで何を浮かび上がらせようとしているのかは、判るようにしておいてくれないと困ると思った。

 ところで、わたしは決して「ハマっていた」わけではないが、縄文時代にはずっと興味を持っていたと思う。この映画で教えられたり気付かされたこともたくさんあったので、そういうことについて少し書いておくことにする。

1、縄文時代は1万年も続いていた。
 映画の中で簡単なタイムスケールが示され、縄文時代が1万5千年ぐらい前から1万年も続いたというのを見せられて驚いた。縄文時代の後には弥生時代が来るが、これは3千年~2千5百年前と考えられているようだから、縄文時代の1万年と比べれば、その後の現代に至る人間の営みはたった4分の1に過ぎないことになる。こういうタイムスケールはどこかで見ていたかもしれないが、今回改めてそれを教えられたのは良かった。

2、縄文人のことはほとんど何も判っていない。
 縄文時代の遺跡が各地で発掘され、土器や土偶といった様々な遺物が出てきているが、縄文人がどういうつもりでそんなものを作ったのかとか、要するに縄文人の感じていたこととか考えていたことなどはほとんど何も判っていないらしい。これが再確認できたのは良かった。
 実際、器であることは確かだが、火焔形土器に代表されるような、実用性を損ねる過剰な装飾がなぜ施されたのかとか、遮光器土偶を始めとして、解釈を拒絶するような奇妙なかたちの土偶は何のために作られたのかといったこと。映画のインタビューでも様々な意見が紹介されていたが、結局判らないからどんなことでも言えるという状況になっているようだった。
 考えてみると、これはなかなか面白い状態と言うべきであって、さすがに宇宙人の姿をかたどったなどというのは突飛すぎるとしても、人間の姿をただデフォルメしたと言うだけではとても割り切れるものではないところが、こんなにも人を夢中にさせるのだと思った。インタビューの中では(誰が語っていたか忘れたが)、「具体的なものを抽象化したというより、抽象的なものそのものへの指向ががあったのではないか」とか、「具象を行うことがタブーであるような世界観があったのではないか」といった意見などは、なかなか傾聴に値するものだと感じた。
 いずれにしても、こういうものを初めて見た時の「何なんだ、これは」という驚きはわたしも経験したことであって、この映画がもう少し整理したかたちで解釈を示してくれるのかと簡単に思っていたが、そんなことはとうてい無理なことなのだった。そういうところに安易に向かわなかったところは、この映画の美点だったのだろうと思う。

3、縄文遺跡は東日本に多く西日本には少ない。
 なぜそうなのかは判らないが、事実としてそういうことになっているらしい。土器の比較においても、過剰な装飾は東日本のものに多く、西日本では少ないようだ。弥生式土器が西日本から始まったことも、これに関係していると考えられているらしい。

 さて、パンフレットの末尾には、この映画で登場した遺跡と博物館が写真とともにすべて紹介されている。こんなにあるのかと驚いたが、この中でわたしが行ったことがあるのは4カ所だけである。そのことについても書いておくことにする。4カ所とは、釈迦堂遺跡博物館(山梨県笛吹市)、井戸尻(いどじり)考古館(長野県富士見町)、尖石(とがりいし)縄文考古館(長野県茅野市)、これに関連する中ッ原遺跡(同)である。
 釈迦堂遺跡博物館は中央高速・釈迦堂PAに隣接していて、PAに車を置いて見学できるようになっている。この遺跡そのものが高速道路工事を契機に発掘されたようで、甲府盆地を見下ろす扇状地に広がる大規模な遺跡だったようだ。井戸尻と尖石は八ヶ岳の麓の標高の高いところにあり、冬場はけっこう気温が低くなるところなので、こんなところに住んでいたのかと驚いた記憶がある。
 これらの博物館で火焔形土器などを見たのだが、確かにあれこれ想像しないではいられない不思議なかたちをしていると思った。尖石で見た「縄文のビーナス」「仮面の女神」という二体の土偶(国宝)も印象的だった。特に仮面の女神は発掘されたのが2000年のことで、当時かなりニュースになったこともあって、のちにこれが出土した中ッ原遺跡にも行ってみたということである。現地には出土した時の様子がレプリカで再現されていた。

 知っているものや知っているところが映画に出てくると、何となく嬉しいものだなと思った。
(渋谷イメージフォーラム、8月21日)
by krmtdir90 | 2018-08-22 12:04 | 本と映画 | Comments(2)
Commented by yassall at 2018-08-23 15:26
同じ日、国立博物館に「縄文」展を見に行きました。私は上野で見られるなら、という程度の意識でしたが、改めて縄文文化に惹かれている人が多いことに気づかされました。natsuさんが縄文ファンだったということも初めて知りました。ん~、深い。
Commented by krmtdir90 at 2018-08-23 18:16
yassallさんが縄文展に行ったというのをブログで見て、タイミングのあまりの符合にびっくりしました。
「縄文」、やっぱり面白いですよね。
弥生式土器は「へえ~、そうなの」程度で特にそれ以上はないんですが、縄文の土器や土偶を前にすると「どういうことだ?」って考えてしまいます。
ファンというほどではないですが、1万年も前の人間があんなものを作っていたというのは、想像力をいたく刺激されます。奇妙なものが好きなんですかね。
natsu
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