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主なテーマ、最近は映画ばかりになってしまいましたが、この何年か海外旅行にも興味があって、もともとは鉄道旅、高校演劇、本などが中心のブログだったのですが、年を取って、あと何年元気でいられるかと考えるようになって、興味の対象は日々移っているのです。
by natsu
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映画「ニッポニアニッポン/フクシマ狂詩曲」

映画「ニッポニアニッポン/フクシマ狂詩曲」_e0320083_18264620.jpg
 福島をフクシマと書くのは好きではない。片仮名のフクシマを狂詩曲という語と結びつけるセンスも安易だし、朱鷺の学名であるニッポニアニッポンを題名とした意図もまったく理解できない。どういう映画を作ろうとも、そのこと自体は表現の自由と言っていいかもしれないが、取り上げる問題にどう切り込んでいるのかは厳しく問われなければならないだろう。
 この映画に見られる製作態度というのは、福島の諸問題に対してまったく安直過ぎるように思えてならなかった。現在の福島は実に多様な側面を持っているのであり、どの切り口から入っても簡単な結論にはならないことを前提としなければならないはずである。ところが、この映画の製作者たち(監督・脚本:才谷遼)は、いろんな問題の入口あたりをちょこっと歩き回っただけで勝手に解った気になってしまい、福島に生きる人々の複雑な現実(思い)と何ら切り結ぼうとしないまま、中に踏み込むこともなく通り過ぎてしまったように見えたのである。

 解っていないくせに解った気になっている、その勘違いに気付いていないというのはどうしようもないと思う。並べられている事実は、ちょっと福島を調べている者からするとほとんどが既知の事項ばかりで、しかもそれらがいずれも説明的指摘の域を出ていないから、何ら目新しい観点などが含まれているわけでもないのである。
 それなのに、この映画は何か鬼の首でも取ったように騒ぎ立てて、そこから事実を解っていない愚かな日本人が多過ぎるとか何とか、一段高いところで主張して悦に入っているように見えたのである。それは福島とは何の関係もない、第三者的立ち位置から見た錯覚に過ぎないのではないか。傲慢さを背景とした過激さほど始末に負えないものはないと思う。

 それにしても、「3・11なんて忘れちゃえば?」というフライヤーの惹句は酷い。言ってはいけないと言うつもりはないが、この低級さは言語道断である。一種の反語だろうとは理解できるが、それでも、そんな言い方を敢えてしなければならない必然性がまったく感じられないということである。少なくともそこが明確に通じていないのなら、こんな言い方はすべきではない。みずからの想像力の欠如を棚に上げて、人の心というものをあまり馬鹿にしない方がいいのではないか。
 一事が万事という気がするが、「フクシマで始まる大宴会!」とか「タブー無視、掟破りの問題作がカゲキに陽気に開幕!開幕!」といった表現(公式サイト・イントロダクション)についても、こういうことをするのであれば、みずからの依って立つ位置について、よほどしっかりとした捉え返しが行われなければならないということである。とにかく、この「大宴会」という映画の展開について、まともに論じる気にはとてもなれないと思う。そういうものを演出して何かが表現できると思い込んでいる時点で、この映画は失敗だと言うべきだろう。

 自分たちがやっていることを絶対視するばかりで、何一つ振り返ってみないことこそが問題なのではないか。福島の取り上げ方は様々あっていいと思うが、どんなやり方をするにしても、観客を納得させるだけの誠実な根拠が作れていなければ、福島に対して失礼だろうということである。
 表現には本来、「タブー」や「掟」はないと思う。問題は、それをあると感じてしまうみずからの「思い込み」の方なのではないか。大切なのは、無視したり破ったりしていると声高に主張することではなく、そんなふうに感じている表現が果たして本当にそうなっているのか、果たして説得力がある表現になっているのかということなのである。わたしにはそうは思えなかった。これは「問題作」でも何でもない。ただの愚作だったと思う。
(ユジク阿佐ヶ谷、3月28日)
by krmtdir90 | 2019-04-02 23:59 | 本と映画 | Comments(0)
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