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主なテーマ、最近は映画ばかりになってしまいましたが、この何年か海外旅行にも興味があって、もともとは鉄道旅、高校演劇、本などが中心のブログだったのですが、年を取って、あと何年元気でいられるかと考えるようになって、興味の対象は日々移っているのです。
by natsu
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映画「ペパーミント・キャンディー」

映画「ペパーミント・キャンディー」_e0320083_17193260.jpg
 イ・チャンドン監督の新作「バーニング」が公開されたのを機に、デジタル化された本作が再公開されることになったようだ。新作の方は特に観たいと思わなかったが、2000年に初公開されたらしいこの映画には何となく興味が湧いた。
 だが、結論を先に言うと、「伝説の傑作」と言うほどのものではないと思った。「韓国現代史を背景に一人の男性の20年間を描く」と言うのだが、韓国映画の感性というようなものがわたしにはあまり合わないのかもしれないと感じた。主人公の設定や言動に共感できなかったし、この監督がそれを描く手法も格別面白いとは思えなかった。

 1999年春、みずからの現実に絶望したらしい男キム・ヨンホが、鉄橋上の線路で列車の前に立ち塞がって自殺する。その直前に「戻りたい!」と叫んだところから、彼のたどって来た20年の人生が節目ごとに巻き戻されて確認されていく。斬新と言えば斬新な手法には違いないのだが、肝心のキム・ヨンホという主人公が、どう見ても自己中心的で自分勝手な男にしか見えない感じがして、あまり近寄りたくない気分にさせられてしまったのである。
 1980年5月まで遡ったところで、彼の人生がねじ曲がってしまった「原因」が明らかにされるのだが、わたしには、罪の意識が彼をこんなふうに投げやりに変えてしまったという、そこのところにもう一つ説得力が感じられないと思った。韓国の徴兵制、馴染めなかった軍隊の規律、鎮圧に向かった戒厳令下の光州、誤って一人の少女を死なせてしまったこと、そこからいろいろなことが狂い始めていったということなのだが、彼がその後にたどった思い通りにならない軌跡が、すべてそこから発しているとは言えないと思ったのである。

 逆回しでない普通の時系列に直して考えてみると、彼自身はみずからの生き方を、この不幸な出来事とは別のところで選び取っていたように思えるのである。確かに少女を死なせた事実は消えないし、それをずっと引き摺ってしまうこともあるかもしれない。だが、それが除隊後は刑事になって反体制の若者を激しく拷問したり、一途に彼を待っていた恋人スニムを拒否して、特に強く惹かれたわけでもない食堂の娘ホンジャと結婚してしまうことなどと、あたかも結びついていたかのように並べられると、それは少し違うのではないかという気がしてしまうのである。
 この男は自分は被害者なのだと主張するばかりで、その生き方の中で多くの人間を傷つけてきたことが見えていないように感じた。彼が戻りたいと言った1979年の描き方も、あの頃は純粋だったと手放しで美化するばかりで引いてしまった。周囲(時代)が彼を追い詰めたというような視点があるようだが、それに共感するのは難しいと感じた。
 このキム・ヨンホを演じたのがソル・ギョングという俳優で、20代から40代まで、20年間の変化を見事に演じ切ったと韓国では高い評価を得たらしい。わたしとしてはこのあたりがよく判らないところで、演技全般が説明的でやり過ぎているという印象が強かった。説明的でくどいというのは、イ・チャンドン監督がそういう描き方をしているということであって、こういうのがいいと感じるところが韓国の国民性なのかなと感じてしまうのである。これは、正反対の感じがある台湾映画などと比べるとどうも好きになれないのである。
(シネマート新宿、4月2日)
by krmtdir90 | 2019-04-08 17:20 | 本と映画 | Comments(0)
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