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主なテーマ、最近は映画ばかりになってしまいましたが、この何年か海外旅行にも興味があって、もともとは鉄道旅、高校演劇、本などが中心のブログだったのですが、年を取って、あと何年元気でいられるかと考えるようになって、興味の対象は日々移っているのです。
by natsu
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映画「MINAMATA-ミナマタ-」

映画「MINAMATA-ミナマタ-」_e0320083_22103428.jpg
 水俣病問題については、これまでほとんどアプローチしてこなかった。石牟礼道子の「苦海浄土」も読んでいないし、土本典昭の「水俣」も観ていない。だから、この映画が描こうとしたものについて知らないことも多いし、評価めいたことを言うのは気が引ける気分がある。だが。
 ユージン・スミスという報道写真家がいたことも知らなかったし、彼の写真集「MINAMATA」というのも見たことがなかった。ジョニー・デップについては一応知っていたが、57歳になった彼がみずからユージン・スミスに扮し、この写真集の映画化をプロデュースしたというニュースも、少し興味は覚えたが、それほど観なければという気持ちが強くあったわけではなかった。ただ、いま改めてこういう映画を作らなければならないという発想は、残念ながら現代の日本人からはなかなか生まれて来ないものであって、そこに強いこだわりを持ち続けたジョニー・デップの感性(思想と言ってもいい)に興味を覚えたところがあったのだと思う。

 観た後で良かったなと思ったのは、こうした問題を扱うと、日本人の視点はどうしても被害者とその家族の側に過度に寄り過ぎる傾向があると思うが、この映画では、視点が常に対象との距離を意識しているように感じられたのが新鮮だった点である。外国人(ジョニー・デップや監督・脚本のアンドリュー・レヴィタス)の感性が、異国・日本をどう捉えようとしているのかというのが、映画の様々な場面で思いがけずクローズアップされてしまったように感じた。それはユージン・スミスが水俣で写真を撮ろうとした時に感じていたはずのことなのだが、同時にジョニー・デップやアンドリュー・レヴィタスが水俣を映画にしようとした時に感じていたことが、重なり合うように浮かび上がってしまうように思えたのである。それは、不自由さの自覚とでも言うべきものだったのではないか。
 こういうことを考えたのは、観ている間中ずっと、どう言えばいいのだろう、登場人物の関係の作り方や言動といったものに、何となく納得し難い居心地の悪さのようなものを感じてしまったからである。ユージン・スミスと「LIFE」編集長ボブとの関係などはスッと理解できたのだが、彼と行動を共にするアイリーンとの関係になるとよく判らなかったし、何より問題だったのは、彼と水俣の住民たちとがどんなふうに関係を築いていったのか(距離を詰めていったのか)が、あまり描けていないような気がしたのである。
 描けていないと言ってしまっては言い過ぎなのかもしれない。だが、少なくとも最初の段階では住民一人一人が感じていたはずの、文化や感性の異なる外国人に対する違和感のようなもの(排他性と言ってもいい)が、通り一遍の描写でスルーされてしまったように感じたのである。確かに、彼が水俣の現実を世界に発信してくれる人だということは信じたいと思っていたかもしれないが、それだけでユージン・スミスという外部の人間を受け入れることにはならないはずである。両者の間には当初かなりの距離があったと思われるが、それを埋めるのは簡単なことではないし、そこが大きな見どころにならなければ説得力は生まれてこないだろう。そのような具体的な出来事が拾い上げられているとは思えなかったのである。
 結果的に強固な信頼関係が醸成されたのは事実だとしても、その過程をこの映画は個々の人間関係としてほとんど描写していないのではないか。日本人のキャストはそれぞれがんばってはいたが、その心理的側面を丁寧に演出することが欠けていたような気がした。この映画はアメリカ映画だが、日本との合作にはなっていない。キャストは一応揃えたが、スタッフに日本人がまったく関わっていなかったことが影響したのではないかと思った。製作意図は評価できるとしても、肝心の日本人のキャラがうわべだけの操り人形のように見えてしまって、ただ与えられた役割を埋めていただけと言ってしまったら言い過ぎだろうか。
 やっぱり辛口になってしまったな。
(MOVIX昭島、10月11日)

by krmtdir90 | 2021-10-12 22:14 | 本と映画 | Comments(1)
Commented by kurihara1954 at 2021-10-15 22:04
今の若い人たちに 水俣のことを問いただしても 知らないの一点張り
やはり時代が違います
私と貴方とでも 歳の差は歴然ですね 
わたしは1960年代に熊本に立ち寄り八代や水俣などを見ています
海というよりもどぶ川でしたね においもすごかった
当時の日本は焼け野原の何もないところから 工場を作り日本再建に取り組んでいましたが
その付けが回ったということですね
当時は四大公害. 日本の高度経済成長期には、重化学工業化のために産業公害が拡大し、
四大公害事件(水俣病、新潟水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそく)が発生したことも知られています
関西でも今の中国の様にスモッグ公害が起きていました 昼間なのに前が見えないほど
このミナマタの映画は夏休みに水俣市へ行った時に見ましたが 町の反応はイマイチ
何故今更 というのが 今の気持ちでしょうね
30数年かけて 公害の街から観光の街へと変えてきたところなのに 何故 蒸し返す という
今の若者も 生まれてくる人も一般人で 俗にいう 水俣2世とか3世ではないという
昔を知っている人たちから見れば 複雑に気持ちになりますね
当時国鉄で 東京からだと丸1日かかり(夜行で20数時間あまり)そして 熊本で乗り換え八代で乗り換えて水俣へ
まだ新幹線も高速もなかった時代です福岡にまだ炭鉱があった時代 
熊本から北の有明海と 熊本から南の八代海とでは 景色が全く違っていました
今のきれいな海からは 想像もつかないでしょうね 映画は創作です 事実を見るのなら当時のドキュメンタリーを見るべし
妻のアイリーンさんは今も京都で公害撲滅の運動を続けています 
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