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主なテーマ、最近は映画ばかりになってしまいましたが、この何年か海外旅行にも興味があって、もともとは鉄道旅、高校演劇、本などが中心のブログだったのですが、年を取って、あと何年元気でいられるかと考えるようになって、興味の対象は日々移っているのです。
by natsu
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映画「アイ・アム まきもと」

映画「アイ・アム まきもと」_e0320083_20220953.jpg
 「まきもと(牧本)」(阿部サダヲ)は地方の市役所に勤めていて、市民福祉局の「おみおくり係」というのを一人で担当している。身寄りがなく孤独死した遺体を市として引き取り、火葬したあと遺骨を無縁墓地に収めるという仕事である。そういうことに専門の係を置く必要があるのかは疑問だが、牧本のちょっと極端なキャラクターを考えると、市役所の中で彼を生かせる場所はそこしかなかったということなのかもしれない。案の定、県から出向してきた新しい福祉局長は、おみおくり係など非効率だからと廃止の決定を下すのである。
 牧本という男は悪い人間ではないが、きわめて思い込みが強く頑固で、人の話は聞かないし場の空気もまったく読めないという、社会生活の中では非常に困ったキャラクターとして設定されている。彼には、死者を「おみおくり」するにはきちんとしたかたちが必要だというこだわりがあって、自費で葬儀を行い(当人はあくまで立て替えている感覚なのだろう)、後から引き取り手が現れた時のことを考えて、納骨を先送りして遺骨を小部屋に溜め込んでいたりするのである。まあ、何と言うか、現実にはあり得ない設定だと言ってみても仕方がないのだろう。この何とも特異な人物の言動を、阿部サダヲが実に大真面目に演じ切っている。水田伸生監督の演出は、運びに多少ギクシャクするところはあるものの、すべての登場人物を細部まで丁寧に作り込もうとしていることが判って好感が持てた。
 ストーリーは、牧本にとって「おみおくり」の最後の仕事になってしまった、蕪木という死者(宇崎竜童)の葬儀のために、その係累を調べていく過程を追っていく。牧本には最後だからという意地があったのかもしれないが、死者の部屋に残されていたアルバムの中に、蕪木の娘と思われる少女の写真を発見したことが、彼を突き動かす動機になっている。この子に父の死を知らせて、葬儀に参列させなければならないと牧本は考える。一度思い込んでしまうと、それに集中するあまり周囲が見えなくなって突進してしまうのが牧本なのである。彼は遺品のケータイに唯一残されていた連絡先「ウオズミショクヒン(魚住食品)」を手始めに、蕪木の過去に関わりがあった様々な人物を訪ね歩いて、ついに大きくなった彼の娘・津森塔子(満島ひかり)を探し当てるのである。この過程で、蕪木と関係があったとされる人物として、宮沢りえ、國村隼、松尾スズキといった面々が登場して、それぞれ味のある演技を披露していた。
 いろいろな経緯はあるのだが、最後にこれらの人物がみんな蕪木の葬儀に集まってきて、とりあえずはこれで一つの大団円という感じになるところで、この映画はまったく唐突な展開を用意するのである。これは断じて納得できなかった。牧本は葬儀の直前に、思いがけない交通事故で急死してしまうのである。いつも周囲から浮いて、ズレまくっていた牧本が最後の葬儀で、新任局長から否定された「おみおくり係」として逆転満塁ホームランを打ったということではなかったのだろうか。彼を死なせてしまって、彼が過去に「おみおくり」した多くの無縁仏を登場させて、彼らが牧本に感謝するというエンディングを作らなければならない理由が、わたしには理解できなかった。こんなところで妙な変化球を投げるのではなく、ここは甘かろうが何だろうが、ハッピーエンドの直球を思い切り投げ込むだけで良かったのではないだろうか。
(TOHOシネマズ南大沢、10月11日)

by krmtdir90 | 2022-10-17 20:23 | 本と映画 | Comments(0)
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