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主なテーマ、最近は映画ばかりになってしまいましたが、この何年か海外旅行にも興味があって、もともとは鉄道旅、高校演劇、本などが中心のブログだったのですが、年を取って、あと何年元気でいられるかと考えるようになって、興味の対象は日々移っているのです。
by natsu
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「師匠」(立川志らく)

「師匠」(立川志らく)_e0320083_20233195.jpg
 落語というものに興味がなかったわけではないが、きっかけがなかったと言うか、その世界にはまったく足を踏み入れることもなくここまで来てしまった。もう落語とは縁がなかったと諦めるしかないのだろう。だから、立川談志のこととなると何となく放っておけない気分になるのは、毀誉褒貶相半ばしたこの人の生前の行跡が興味深かったからで、その落語が印象に残っているということではない。
 著者の立川志らくについても何も知らなかった。けっこうTVに出たりしていたようだが、最近のわたしはTVをほとんど見なくなってしまっている。で、とにかく読んでいたら、この人はあの「赤めだか」を書いた立川談春と兄弟弟子だったことが判った。あとで確認してみたら、「赤めだか」と共通するエピソードなどもけっこう出てきていて、そこに二人の考え方の違いが表れているようで面白かった。
 談志が死んだのは2011年で、談春の「赤めだか」は2008年に出版されているから、談志はまだ存命だった。ただ、談志はこの年に喉頭癌と診断され、以後は闘病生活を余儀なくされている。当然のことながら、「赤めだか」にはその部分は書かれていない。一方、志らくのこの本はつい先日出たばかり(23年11月)の本だから、談志の死に関するあれやこれやまですべてが入っている。もちろんそこには志らくの取捨選択があったはずから、すべてが書かれているとはとは言えないが、談春同様みずからの修業時代を語りながら、談春以上に立川談志という人間像を(その弱さなども含めて)浮かび上がらせていたのではないか。
 これは書かれた時期の違いだから仕方がないことだが、やはり師匠の死を受け止めたあとで、12年の歳月が経過したというのも大きかったように思う。その分、志らくの方には思い出語りの甘さのようなものが出てしまった気もするし、談春が見せていた語り口の若さ(やや突っ張った感じ)の面白さが色褪せるというものでもないのだろうと思った。二人の落語を聞いたこともないのだから、その本の語り口の違いを比較しても仕方がないことだが、同じ談志という師匠を持った二人が、その後どんなふうにして違った方向に進んで行ったのかが、たぶん読み取れるのだろうなと思ったりしているのである。
 それにしても、この本の面白さは、立川談志という主役の面白さがあってのものだったのは確かだが、二人の書き手の並外れた筆力もしっかり評価しておかなければならないと思った。ジャンルは違うけれど、ビートたけしよりはずっと上、又吉直樹と肩を並べる書きっぷりと言ったら褒め過ぎだろうか。

# by krmtdir90 | 2023-12-29 20:24 | | Comments(0)

「政治はケンカだ!」(泉房穂)

「政治はケンカだ!」(泉房穂)_e0320083_20412161.jpg
 明石市で市長をしていた泉房穂という人については、わたしがフォローしていた旧ツイッターで話題になることも多く、数年前からずっと注目していた。いろいろあって市長を辞めたあと、次はどうするのかとずっと気になっているのだが、いまのところ本人は「役者ではなくシナリオを書く方に回りたい」などと言って、具体的な方向性を示していない。政治は結果がすべてだから、一地方自治体のこととは言え、常に市民とともに歩む姿勢を貫き、市民第一で数々の施策を実現してきたことには大きな意味があったと思っている。この人が残してきた具体的な実績は、いまの堕落した国政などに楔を打ち込み、風穴を開けることにつながるのではないかと、性急かもしれないが、つい期待がふくらんでしまうのである。
 この本には「明石市長の12年」という副題が付いていて、フリーの立場になった泉房穂氏に、あの「朝日新聞政治部」の鮫島浩氏(こちらもフリー)がインタビューして、それを文字起こししてまとめたものである。泉房穂氏は、鮫島氏からの多岐に渡る質問に非常に率直に答えているが、その答を引き出したのは鮫島浩氏の成果だろう。中で「なるほどな」と思ったのは、「闘いの日々」と題された最初の章で語られた、政治を志す原点となったみずからの出自に関する部分だった。明石市二見町という漁村の貧しい家庭に生まれ育った泉氏は、子どものころから周囲の様々な理不尽を見てきたようだ。そうした中で、10歳の時に将来は明石市長になると決意したのだという。少年時代からずっと、この人には「やりたいこと」がたくさん生まれていて、政治を通して「やらねばならないこと」が明確にあったということなのだ。この人は、政治の力で「変えなければならない」という課題をしっかり持って市長としての12年を闘ってきたのだということが判った。氏の語った中で特に印象的だった言葉を次に書き抜いておきたい。
 私はどこにいようが、ずっと神戸新聞の明石版を読み続けています。それは、世の中の誰よりも明石に詳しくなる必要があったから。おそらく、いまのわたしは全人類の中で一番明石に詳しいはずです。だからこそ、私は故郷・明石のことを心から憎み、心から愛しているんです。誰よりも明石について知っているからこそ、まだ消えない理不尽に対して、誰よりも強い憎しみを抱いている。
 こんなふうに語れる政治家が他にいるだろうか。以降の章で泉市長が明石市で実現したことの意味が次々に述べられていくのだが、その一貫した考え方には大いに納得させられるものがあった。細かく触れることはしないが、各章のタイトルを次に書き抜いておくことにする。第二章:議会論、第三章:政党論、第四章:役所論、第五章:宗教・業界団体論、第六章:マスコミ論、第七章:リーダーシップ論。どの章も首肯できることばかりで、非常に面白く読ませてもらった。

# by krmtdir90 | 2023-12-27 20:42 | | Comments(0)

「ザイム真理教」(森永卓郎)

 年末になったので、今年読んだ本の中から少し記録しておきたいと思う。

「ザイム真理教」(森永卓郎)_e0320083_17065408.jpg
 それにしても、どうしてこんなひどい世の中になってしまったのだろう。
 ずいぶん昔のことだが、わたしが教員になって初めて貰った給料は確か4万2千円台だったと思う。それくらいで、普通に生活できる時代だったのだ。その後、物価は徐々に上がっていったが、給料の方もどんどん上がっていった。それでももっと上げろとストをしたりしたが、全体として暮らしが豊かになっていく実感はあったと思う。消費税なんてなかったし、預金の金利もいまよりずっと高かった。時代が変わったのは事実だが、本当にこれ以外なかったのかどうか、若い現役世代はこの国の現状について、これでいいのかともっと考えてみた方がいいのではないか。
 この30年とよく言われるが、この国だけが世界の成長から取り残され、みんなが全然豊かになれなくなってしまった(貧しくなってしまった)ことについて、なぜそうなるのかをもう少し考えてみた方がいいのではないか。これは自己責任なんかでは断じてない。年齢的にわたしはこのまま「逃げ切れる」だろうと思うが、後に残る子どもたちの未来を考えると心配でならないのだ。山本太郎が繰り返し言っていることだが、この間の政治の(特に経済政策の)誤りがこの事態を招いているのであって、富裕層を優遇して格差を拡大するばかりの政治のからくりに、早くみんなが気付かなければ取り返しがつかないところに来ていると感じている。
 わたしはこれまで、森永卓郎という人を誤解していたと思った。TVなどでしたり顔で判ったようなことを並べる御用評論家の一人だろうと思っていたが、まったく違っていた。この人は、この本を書くことで覚悟を決めたのだと思った。このまま財務省ベッタリの(資本家優遇の)政治が続いていったら、この国は本当に壊れてしまうという危機感がこの人を動かしたのだろう。この本の内容は、山本太郎とれいわ新選組が孤立を恐れず主張してきたことと驚くほど重なっている。確かに問題は、財務省主導で強固に作られてきた神話(嘘)が、メディアを始め様々なところに浸透して、まるで宗教のように人々を支配してしまっていることなのだ。
 こんなことを言ってしまったら、この人はもうTVなどには簡単に出られなくなってしまうのかもしれないが、正しい考えがこうして押し潰されていくことを認めることは出来ない。経済はすべての人の生活に直結している問題なのに、なかなか踏み込んで考えようという気になりにくいところがあると思う。だが、そこを越えないといい未来は見えてこないし、最低限みんながそのハードルを越えようとする努力が必要なのだと思う(貧しさを受け入れて諦めてしまうことと比べれば、まったくたいした努力ではない)。
 みんなに読んでもらいたい本だが、本体価格1400円を購入しようとすると、いまのロクでもない政府に140円の罰金を取られることに怒りを覚えなければおかしい。消費税は社会保障のために使われるなんて真っ赤な嘘で、財政赤字とか国の借金とか言って危機感を煽っているのも全部嘘で、結局富裕層を優遇するための誤魔化しでしかないことを、森永卓郎は非常に判りやすく明らかにしている。この場合、騙されるのは騙される方が悪いのであって、不満を溜め込んだまま思考停止して(信じて)飼い慣らされてしまう愚を、みんなが気付かなければならないのだと思う。もう時間はそんなに残っていないのかもしれない。

【追記】
 この記事をアップした直後(27日)に、森永卓郎氏がステージ4の膵臓癌であることが公表された。ステージ4というのは他の臓器にも転位が見られる状態を言うようだが、何とか良い方向に向かってほしいと願わずにはいられない。この本で初めて氏の本当の姿を知った「にわかファン」に過ぎないのだが、氏にはこれからも元気でバンバン頑張ってもらいたいと思っている。回復することを祈っている。

# by krmtdir90 | 2023-12-25 18:03 | | Comments(0)

映画「ほかげ」

映画「ほかげ」_e0320083_16133012.jpg
 映画終盤の闇市のシーンは、あの深谷シネマのある旧七ツ梅酒造跡地で撮影されたらしい。広い敷地に酒蔵の古い建物が保存されていて、普段はそれらが様々な店舗などに利用されている場所である。観ていてたぶんあそこだと気付いたのだが、帰ってから調べてみたら当たっていた。だからどうというわけではないが、あの闇市の雑踏の中に少年が消えて行くラストシーンに、塚本晋也監督はこの映画のわずかな希望の気配を漂わせたのだと思う。それは簡単なことではないが、少年(塚尾桜雅)には何とかここを生き抜いてほしいという願いのようなものである。
 この闇市のシーンの終わりごろ、一発の銃声が聞こえて、人々が一瞬静かになるところがあった。この銃声について、塚本監督はまったく説明的描写を加えていないのだが、演出上何の意味もなく銃声を響かせることはあり得ない。これは女(趣里)がみずから命を絶ったことを表していたのだろうと思った。病気になってしまったから近付いてはいけないと、姿を見せずに少年を出て行かせた時、置いて行かせた少年の拳銃を使ったと想像される。映画の後半、少年がテキ屋の男(森山未來)に同道して男の復讐(と言っていいのかどうか判らないが)を手伝った時、少年の拳銃には4発の弾が入っていたのに、そこで使われたのは3発だったと思い当たるのである。女のところに置いてきた拳銃には、弾が1発残っていたはずなのだ。テキ屋の男がかつて上官だった男を撃った時、少年はすぐ間近でその一部始終を見ていた。拳銃の音は彼の脳裏にしっかり刻まれたはずであり、闇市の雑踏の中で聞こえたのがそれと同じ音だったことは判ったのではないだろうか。少なくとも、塚本晋也監督はそういう連想が行われるように場面をつないでいたように感じた。
 少し前のところで、前半一緒だった復員兵の男(河野宏紀)が、まるで正常な精神を失って虚脱したような姿で、闇市に続く暗いガード下に座り込んでいるのを少年に目撃させている。少年はすべてを悟って、男が戦地でお守りにしていたという算術の教科書を傍らに置いて立ち去るのである。塚本監督はこの映画で、戦争が終わってもその体験が人々の精神に回復不能の深い傷を残してしまった事実を描いている。戦争が終わってもその傷は終わることはなく、戦後の混乱の中で心身ともに過去と折り合いを付けられなかった人がたくさんいたということなのだ。
 塚本晋也監督の映画は初めて観たが、この監督が作り出す隅々までリアルな画面の緊迫度(特に陰影と闇の表現)には圧倒された。それぞれの傷を抱えて登場してくる三人(趣里、河野宏紀、森山未來)の演技、特に趣里のセリフ回しにはこちらにストレートに響いてくる力があって印象に残った。三人とも、ごく普通の人生を生きたかっただけなのが伝わってきて胸を突かれた。少年(塚尾桜雅)にも傷跡は残っているが、結局普通の生活に戻ることが出来なかった三人の無念を、すべてを見ていた少年のこれからに集約させた作劇も見事だったのではないか。
(あつぎのえいがかんkiki、12月22日)

# by krmtdir90 | 2023-12-24 16:14 | 映画 | Comments(0)

映画「スリ・アシィ」

映画「スリ・アシィ」_e0320083_20494842.jpg
 普通ならこの手の映画を観ることはないのだが、インドネシア映画というのに興味を覚えてちょっと出掛けてきた。インドネシアは典型的な多民族国家で、国民の8割以上がムスリムだがイスラム国家というわけではない。信教の自由がちゃんと憲法で保障されているらしい。この映画は、1954年に始まったインドネシア初の人気コミックシリーズ「スリ・アシィ」を原作としているようだ。この映画を監督したウピ(変な名前だ、通称なのだろうか)は女性監督だが、この主人公のスーパーヒーロー「スリ・アシィ」が女性だったことを、この国にとって大きな意味があったと述べている。確かに男性優位のムスリム社会において、圧倒的な強さを誇る女性が主人公になって、縦横無尽の活躍を見せるというのはなかなか興味深いことだと思った。
 主人公の力の起源は神話の女神(映画の中でも説明されていたが、どういう神話なのかはもう一つはっきりしない)に由来していたようだ。孤児だった少女アラナが成長して、みずからが正義の女神「スリ・アシィ」の化身であることに目覚め、破壊の女神(火の女神)の復活を阻止すべく、強力な「悪魔の精」との最終決戦に臨んでいくというのがストーリーの概略である。まあ、真面目に書いても仕方がないのだが、ここに至る経緯がいろいろなエピソードで語られていて、設定や展開が何となく野暮ったいところがインドネシア的なのかもしれないなどと思いながら、深く考えずに観ている分には割と変化もあって面白かった。
 インドネシア映画についてインターネットなどをちょっと見てみたのだが、けっこう複雑な上にはっきりしないことも多く、途中で追うのを諦めてしまった。正義と悪の対決が荒唐無稽な架空世界で行われるのではなく、インドネシア社会の格差や腐敗といったリアルな背景の下で、案外人間的で身近な対立構造に落とし込まれているのが奇妙な感じがした。インドネシアでは現実世界と神話世界がかなり近いところで語られるのが普通なのだろうか。
 特に語りたいことがあるわけではないのでこんなところにしておく。そういえば、数年前に観たインドネシア映画「マルリナの明日」も、主人公の女が身勝手な男に平然と復讐するという「強い」女のストーリーだったのを思い出した。
(MOVIX昭島、12月21日)

# by krmtdir90 | 2023-12-22 20:50 | 映画 | Comments(0)


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